166.世界征服? 冗談でしょ(3)

 軽い口調で告げたのは、あまりにもリアムが心配そうだから。確かに庭でお茶してただけで攫われる僕ちゃんだったけど、今は傭兵達の立派なボスだぞ。簡単に害されたりしない。リアムの頬を撫でてにっこり笑った。


「土産はいいから、ケガをしないでくれ」


「わかった。でも何かお土産は必要かな。だって、可愛いお嫁さんを待たせるんだもん」


「お嫁、さん……」


 照れたリアムが真っ赤な顔を両手で覆ってしまった。何とか顔を見せて欲しいが、ここで無理やり手を剥いだら勢いで殴られそうだ。主にシフェルとか、ウルスラとか。ヴィヴィアンは興味深そうに観察に徹している。そもそも、なんで彼女はここに呼ばれたんだっけ?


「ヴィヴィアンって、何でここに来たの?」


「宮廷魔術師としてです。あとは、陛下の女性用のマナーや所作の教師も兼ねています」


 びっくりした。宮廷魔術師って、お抱えの技術者じゃん。前にオレが黒い沼経由で西の飛び地に誘拐されたとき、魔術師が総出で現場調査をしたと聞いた。魔法絡みのプロフェッショナル、しかも宮廷付きのエリート部署なら、ヴィヴィアンは公爵令嬢でキャリアウーマンってわけか。


 才色兼備とはよく言ったものだ。皇帝陛下を務めるリアムもすごいが、クリスティーンも近衛騎士で、ウルスラは宰相閣下だから……この世界の女性は凄い人ばかりだな。シフェルの説明に頷きかけ、ん? と左にかしげる。


「もう所作を直して平気?」


「キヨは北の王族でしょう? あとはあなたの肩書をもう少し豪華にすれば、問題ないと思います。王子なら婿養子で押し通せます。欲を言えば、もう1つくらい肩書が欲しいですね」


 簡単そうに言うけど、オレの肩書はかなり豪華だぞ。『ドラゴン殺しの英雄』で『聖獣達の主人』だし、『北の王族』になった『中央の皇帝陛下のお気に入り』だから。ついでに『中央の国の辺境伯位』も持ってるし。希少な『赤瞳の竜』属性の『異世界人』だ。これ以上の肩書が必要?


 シフェルに指折り説明して尋ねれば、にっこり笑ってとんでもない提案をされた。レイルも手を叩いて同意する。にこにこしてるウルスラも含め、無責任だぞ。


「そうですね。西は属国になりましたし、北は友好国。あとは東と南を平定すれば安心して結婚できますよ」


「そりゃーいい。お前が世界統一して、皇帝陛下になりゃいいじゃん」


 ――それって、さっき保留された世界征服案じゃね?

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