200.まさかの増援あり(2)

 土産だと果物持参のレイルが合流する。情報屋の肩書きだが、本当に神出鬼没だった。オレの居場所は赤いピアスで筒抜けだけど。


「おれなら絶対に御免だ。絶食するぜ」


 心底嫌そうに口を開いたレイルに、ジャックがげらげら笑い出す。ツボに入ったのか、腹を抱えて笑うジャックの眦に涙が滲んだ。もう苦しそうだけど、放っておこう。明日腹筋が痛くなるぞ、それ。


 溜め息をついたオレの肩を叩き、レイルが情報が2つあると指で示す。頷いて少し距離を置いた。心得ている傭兵達は、周囲を警戒するものの離れてくれる。


「何かわかった?」


「良い話と悪い話。ひとつずつだ」


「どっちでもいいよ」


 最終的に2つとも聞くのは確定事項だ。ならどちらから聞いても、答えは同じだった。


「ふーん。ひとまず……南の国に東から増援が入った。王都周辺に陣を築いて防衛するつもりらしいぞ」


 こっちが悪い話ね。頷いて次の話を待てば、レイルは煙草を咥えて舌打ちした。


「湿気ってやがる……ああ、悪い。もうひとつも増援だ。シフェルは動けないんで、クリスティーンが騎士団と有志の兵を連れて明日にも合流予定。お前を狙ってる貴族の情報付きだ」


「は?」


 間抜けな反応をしながらも、レイルの煙草に手を触れる。少しだけ指先に魔力を込めて、乾けと念じた。気をつけないと燃やしてしまうので、熱を直接かけるのはやめておく。


「サンキュ」


 礼を言って火を着けたレイルが吸い込む。自分でも麻酔効果のあるハーブだと言ってたが、中毒性があるんじゃなかったか? コイツ、もう中毒患者じゃん。


「有志の兵って何」


「竜殺しの英雄で、孤児を救う聖者様なんだとさ。祭り上げたウラノスの工作のおかげで、お前は中央の国の有名人だぞ。御殿でも建ててもらうか?」


「やだよ、似合わないもん」


 知らない間に有能な女宰相は、あれこれと裏で動いてくれたらいし。にしても、オレを看板にしなくてもいいだろう。見栄えならシフェルでいいし、王族ならシンでも構わなかった。まあ、柵がない異世界人という便利なカテゴリーは、使い勝手が良いのか。


「そんなに集まらないだろ」


「それが驚くほど集まって、抽選になった」


 集めた兵が戦場に抽選で出られるって、オレなら外れることを祈る話だが……話を聞く限り逆だ。当たったら「よっしゃ!」と拳を突き上げる姿が想像できた。


「責任取れないけど……」


「誰も期待してねえよ、そんなん」


 くしゃっと顔を崩して笑う。レイルのこういうところ、突き放した感じの優しさが好きだ。歳の離れた兄がいたら、きっとこんな感じだと思った。

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