12.淡い自覚(7)

 ゲームでパーティーを全滅させた苦い記憶が過ぎる。あのあと、他の奴らにボロクソ言われたっけ。


 トラウマって程じゃないが、その全滅したゲームが原因で、結局テレビゲームはやめてしまった。まあ、最終的に回りまわって、リアルなサバゲーを始めちゃったわけだが。


「文化や知識は俺が教える」


「え? 皇帝陛下って忙しいんじゃないの?」


「いや、暇だ」


 暇だと言い切る戦争当事国の皇帝――これって普通なのか? この国を中心に東西南北から攻め込まれてる状況で、トップが暇なのは……おかしい気がする。


「暇……?」


「ああ、いくさは騎士団と傭兵達、まつりごとは宰相や文官がいる。俺は国の象徴であり、負けたときに首を取られる役目くらいしかない」


 けろりと物騒な発言をした皇帝陛下を頭から足の先までじっくり眺めて、大きく溜め息を吐いた。”大将の首を取られたら負け”のルールは、どうやら異世界でも有効らしい。


 妙に達観した感じで自分の行く末を語るリアムは、それがどうしたと言わんばかりの声色だった。


「いやいや……首取られるって。それで済まなかったらどうするの」


 こんな美人だぞ? 敵国に連れ去られて、あ~んなことやこ~んなこと――良い子の自主規制――されちゃうかも知れないだろ!! ましてや、そ~んなこと――赤面しつつ過激すぎて自主規制――されたりしたら……。


 ぶっ殺す。そんな輩はオレが確実に、転生も出来ないくらい粉々に砕く!!


 かつて『大人のピンク本』で読んだ、他人様ひとさまに説明不可能な状況を思い浮かべて、ちょっぴり殺気が漏れる。慌てて抑えるが、勝手な想像は妄想となって膨み続けた。


「それで済まない事態か? 国を乗っ取りはしても国民を虐殺はしないだろう」


 当たり前だが、リアムは普通に受け答えする。違うんだ、オレが心配してるのは……国民の皆殺しじゃなく、リアムの貞操問題なのだが。


 説明する気はないけどな。

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