第14章 お料理チートじゃね?
63.次の戦場までに簡単クッキング!(1)
まあね、オレだって勝ち続ける部隊がいれば利用するけどさ。そいつらに厳しい戦場を任せて、軍全体のバランスを取ろうとするけどね。
総指揮を任されたシフェルの判断に、ちょっと意地悪が混じってるんじゃないかと疑いながら、捕虜を縛り上げるよう命じた。黙々と仕事をする傭兵さん達の優秀なこと。感謝しかない。
指揮官自ら捕虜を縛るのもおかしいので任せたが、実際はもっと切実な理由があった。オレが縛ったら
『主殿、戻ったぞ』
「お疲れさん、ヒジリ。コウコとブラウもありがとうな」
帰ってきた聖獣を撫でて労っていく。それぞれに影に沈んだり首に絡まったりする姿を見て、北の兵達が青ざめた。ちなみにジークムンド達の手際がいいので、すでに半数は縛られて転がっている。
「聖獣を3匹も従えているのか……」
呆然とした兵の声を聞きながら、オレはのんきに別のことを考えていた。そうか、やっぱり獣だから○匹って数えていいんだ……。人じゃないし、単位をどうしようか迷ってたんだ。
自動翻訳があるから多少のおかしな日本語は直してくれると思うが、単位はどう訳されるかわからない。へんな数え方すると、きゅっと首が締まりそうな予感……あ、フラグはいらないぞ。
「キヨ……おい、キヨ! 聞いてるのか?」
肩を叩くレイルを振り返ると「しょうがねえな」と苦笑いされる。暮れ始めると早い夕暮れは、あっという間に薄暗い時間帯へ突入していた。
「ごめん、何?」
「野営場所だ。ここにテントを張るぞ」
足元を指差され、少し考えて頷いた。知らない敵地で暗い中を歩くのは無理がある。しかも足手纏い確実な捕虜つきだ。回収部隊が来るまでここで待つのが、一般的な指揮官の判断だろう。
念のために水対策で、もう少し土地を持ち上げておくか。もう川が溢れる心配はなさそうだけど、寝ている間にひたひた水が襲ってくるのは御免だ。
「わかった。この丘を大きくするから待ってて。ヒジリ、お願い」
『命じればいいものを、願うとは……主殿は変わっている』
「丘を5倍くらいにして。平たく大きく」
身振り手振りで伝えると、台形の古墳みたいに土地が持ち上がった。うん、塹壕造りのときも思ったけど、意外と土魔法って便利だ。
「ありがとう、ヒジリ」
『主殿ならもっと簡単に成すだろうに』
抱き着いて黒い毛皮を撫でると、嬉しそうに尻尾を振りながら口は悪態をつく。ツンデレは装備しなくていいぞ、ヒジリ。ぐりぐりと喉の下を撫でる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます