276.北の王家の裏事情(3)
疲れ切ったオレは、最愛のお姫様リアムの膝枕をゲットした。というのも、あまりに気の毒な状況だったとベルナルドが説明してくれたのだ。じいやは曖昧に微笑みながらも、同情の意思を示した。この時点でリアムの足元に懐いていたのだが、膝の上をぽんぽんと叩いて促される。
恐る恐る頭を乗せると、優しく撫でてもらえた。なにこれ、すごいご褒美なんですけど? たまには北の王家に帰ってやってもいいかな。と思うくらいには嬉しい褒美だった。
明日にはまた戻らなくてはならない。リアムを連れに行くだけと説明したので、シン達はすぐに帰ってくると思ったらしい。意外と簡単に頷いてくれた。あまり待たせると、こちらに攻め込んできそうだ。
「義理の父上はどうだった? 優しくしてくれるか」
まだ皇帝陛下口調のリアムに、オレは曖昧に頷く。今になってなんだが、リアムを会わせても平気だろうか。心配になってきた。可愛い嫁が出来ると知ったら、リアムに抱き着くんじゃないか? もちろん即、引っぺがすけどな。
「優しいというか、過保護?」
リアムに曖昧に伝えるしかない、この辛さよ。愚痴りたいけど、危険な親がいると判断されたら結婚に差し支える。過保護と表現するしか思いつけない、オレの残念な言語力。くそっ、こんなんなら大量の本を読み漁ってチートに備えるべきだった。
「セイを大切にしてくれるなら、良かった」
「ああ、うん。まあ……良かった、のかな?」
嫌われるよりマシだろうけど。微妙な受け答えになってしまう。こうなったら見せた方が早いな。最近は魔力制御も慣れて上手になったので、護衛を一気に転移させることになった。北の国の王宮から数時間離れた街に魔法陣があるという。中央の国と国交があるので設置されたようだが、王宮から離れてる理由は「攻め込まれると困るから」辺りか。まあ、中央の国も田舎に設置してたけど。
「今回は直接飛ぶから」
「余はセイを信じているぞ」
「ええっと……その。もうバレたんだし、皇帝陛下じゃなくてリアとして同行して欲しい」
「い、いいのか?!」
リアムの方が食い気味に聞いてきた。え? なんでダメだと思ってたの。もう国内でバレたし、近々オレと結婚してお嫁さんになるんだぞ? 義理の家族に挨拶に向かうのに、男装はおかしい……んだよな? オレの常識がまた違うのかも。
不安になったものの、大きく頷いて肯定した。途端にリアムの表情が明るくなる。膝をついて見上げる状態のオレには眩しすぎて、目が潰れそう。
「ドレスを一緒に選んで欲しい」
「うん」
嬉しくなって頷き、オレはリアムに促されて隣に腰掛けた。もう公式の婚約者で、リアムと友人のフリは要らない。侍女達が嬉しそうに人を連れてきた。
ここでオレは育ちの違いを知ることになる。
「デザイナーの方がお見えになりました」
これからオーダーメイド!? すぐ帰るって言っちゃったんだけど……明日までに服の準備終わらない、よね?
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