162.人気取り? やったもん勝ち(5)
ライアンが彼を連れて行こうとしたのを見て、他の男達が騒ぎ出した。殺人者は除外されてきたのに、子供ならいいのかと騒ぐ彼らに、ジークムンドが椅子から立ち上がる。
熊のような巨体で威圧しながら、騒いだ男を摘んで失格を言い渡した。しばらく文句を言いながら騒いでいる声が聞こえたが、やがて他の傭兵連中に追い払われたらしい。静かになった場で、新しい10人を審査する。さすがに20回目を超えた辺りで、疲れて休憩を挟んだ。
「すごい数だな〜」
「だから言っただろ。もっと条件を絞れ」
「それは嫌」
平和で権利意識の強い前世界での知識は、一部がチートとしてこの世界に良い影響をもたらす。逆に危険な知識も山ほどあり、それらは与えてはいけないと思う。騙し騙されの貴族ですら、前世界の人間と比べたら真っすぐな正直者だった。
引きこもった当初は、世界のすべてが自分に悪意があって意地悪されているような気がした。あの経験があるから、今は出来るだけ受け入れる側になりたい。偽善だと言われるし、あれこれ批判があっても、やってみて後悔すりゃいいんだ。
取り返しがつかない失敗をする前に、きっとコイツらが止めてくれるから。信頼できる仲間がいるのに、せっかく子供の外見でやり直せるのに、大人ぶった割りきりの良さなんて必要なかった。好きにやろう。
「次の人たち入れちゃって」
指示された傭兵に促されて子供と大人が入ってくる。中学生くらいの年齢だろうか。今のオレと同じか少し上くらい。まだ働く年齢じゃないだろ……って、オレも同じこと言われそうだけど。
彼らの言い分を聞いているところに、騒ぎの大きな集団が近づいてきた。
「キヨ、ようやく来たぞ」
「へえ、遅かったね。待ちくたびれちゃった」
レイルと白々しいやり取りをしながら、団体さんが着くのをのんびり待つ。後ろから近づいてくるが、振り返ってやるほど親切じゃなかった。向こうが声をかけるまで、完全に無視を貫く。
「ここで何をしている! 我がラスカートン侯爵家の所領だぞ。すぐに出ていけ!!」
「ん? すごい名乗り方だね~」
「よほど自慢の家名らしい」
「一応侯爵を名乗ってるなら、偉そうで普通だろ」
「まあね。それを言うならおれは王族だけどな」
げらげら笑うレイルの一言で、打ち合わせ通りに煽っていた傭兵達がどっと笑う。絶対に冗談だと思ってるんだろうが、レイルの話はマジだからな?
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