279.結婚報告は波乱万丈(2)
リアムを狙ったなら処刑確定だけど、その前に聖獣に処分されちゃったから。八つ当たりする相手は、別に探してもらおう。機嫌よく歩き出すオレの後ろで、じいやは顔を引き攣らせる。だがリアムはにこにこと笑顔だった。
「セイは強くて、カッコよくて、最高のお婿様だ」
「ありがとう。でもリアムの方が可愛くて賢くて、オレを受け入れる大きな器を持った優しいお姫様だよ」
ちゅっと頬にキスをして、官舎に入った。一気に口笛と拍手で迎えられ、どうやら見られていたことに……リアムが真っ赤になる。オレは耳と首は赤くなったものの耐えた。え? バレてる。そんなことないぞ。
じいやの案内でテーブルにつく。用意したのは、他国で調達した食材をふんだんに使った和食もどきだった。というのも、じいやのところの女中さん達は夜通し働いた上、今もまだ交代しながら縫い物を続けている。早朝の訓練後にすぐ準備した朝食を届けた帰りに、リアムを呼びに行ったのだ。
彼女達の食べ慣れた味は、じいやの指導した和食。あの椿旅館も刺身だの天麩羅だの、基本は和食だった。それを踏襲して、オレが和食を作ったのだが……じいやにダメ出しを食らった。そのため、表現としては「和食もどき」となる。
くそっ、味噌汁の出汁ってなんだよ。鰹節使うのは知ってるけど、出汁の取り方を一般的な男子が知ってるわけないんだからな? いや、あの頃引きこもってたから知らないだけで、本当は全員知ってるのが当然の知識だったり? だからラノベで料理チートが流行ってたのか?!
青ざめたものの、知らない知識はどうしようもない。じいやに指導されながら出汁を取り、鰹節は勿体無いので青いほうれん草に和えた。冗談じゃなくて、本当に青い。緑じゃくて青……スカイブルーだった。鰹節の茶色といいコントラストだ。
「セイ、これはどうやって食べるのだ?」
椿旅館で見た料理に似てる、くらいの感覚は持ったらしい。リアムが首を傾げた。箸は使い慣れていないが、徐々に覚えるつもりだと言っていたので放置。今日はおにぎりと味噌汁、ほうれん草の鰹節和え、焼き魚と梅干しだ。ちなみに梅干しは遠征先の南の国で調達したため、鰹節入りだった。どんだけ鰹節なんだろう。焼き魚が鰹じゃないのが救いだな。
「ちょっと待ってね」
声をかけてから椅子の上に立ち上がり、変な顔で料理を眺める傭兵達に向けて声をかける。
「今朝は椿旅館風のお料理にした。黒い三角はおにぎり、手掴みで食べてよし! 魚には骨があるから注意。赤い丸いのは梅だけど、酸っぱい上に種が入ってるからね。あと味噌汁はスープと同じだ。以上! いただきます」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます