92.空腹は最高の調味料(3)
赤外線じゃなくて……猫を乾かしたら爆発した都市伝説があるから、電磁波! そうだ、電磁波が危険とか、そんな話をテレビで観た!
「コウコ、ブラウ、スノー」
全員大集合で集められた聖獣だが、場所が狭いので小型化して並んでもらう。目の前で曖昧な知識で説明を始めた。
「あのさ、目に見えない電磁波っての知ってる?」
翻訳されないらしく『デンジハ』という単語に怪訝そうな顔をされた。どう説明したら伝わるんだろうか。理系の大学を出たら説明できたかも……唸りながら
「食べ物の水分をすっごい早く揺らすと、温かくなるんだけど」
『主人、デンジハの話はどこへいったの?』
『私もわからないが……早く揺すればいいのか? 主様』
「いや、全然違う」
困惑顔のオレの前で、しょんぼりする聖獣3匹という状態に、周囲はざわめいていた。聞いたこともない単語が出た後で、顔を見合わせたオレ達は項垂れる。
『主殿、お待たせ……そんなに腹が減っているとは思わなかった』
ヒジリが大きな豚に似た獣を捕まえて戻ってきたが、項垂れたオレ達を見て目を見開く。肉の調理方法は新たに考える必要はあるが、とりあえず食べ物は確保された。
「ありがと、ヒジリ。ノアとジーク、サシャでバラして」
口々に了承しながら大きな豚もどきを回収していく。ヒジリが影から引っ張り出したサイズは、軽く乳牛サイズだ。これなら明日の朝も肉が食べられそうだった。手早く皮を剥いでいく彼らには悪いが、怖いので見たくない。
背を向けて調理方法を真剣に考えた。要は炎や煙を出さずに、鍋の中身に火を通せばいいわけで、電子レンジ作戦は無理。あと考えられる調理器具……蒸し器はお湯がいるからダメ。そもそもお湯が沸かせる環境なら料理が出来るし。
「火がないのに温める方法――あった!」
「キヨ、肉が出来たぞ」
「ありがとう。この鍋に入れて!」
お湯が沸かせないので置いてあった鍋に肉を入れて、調味料のハーブ塩を混ぜ込む。この辺りは器用なノアとライアンが手伝ってくれた。広場の中央に肉入りの鍋を2つ並べ、隣に水を張った鍋を置く。金属製なので問題ないだろう。
「よし! 全員鍋から離れて」
「ボスは何を始める気だ?」
「コウコ、水を沸騰させて」
合図をしてコウコに鍋の水を加熱させる。ドラゴンブレス(極小)一発で沸騰した。鍋が溶けないように気遣ってくれる温度調整がにくい。ぶわっと水蒸気が上がったのを見て、すぐに鍋を中心に半円形の結界を張った。熱を逃がさないようにぎりぎりの大きさで張る。
真っ白に曇って見えなくなった結界の周りで、傭兵達がパンを手に首をかしげた。。
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