271.もう公表しちゃえ!!(2)
あれれ? これで反撃終わり? まさかこの程度なのか。それでケンカ売ったの。呆れ半分で周囲の様子を窺うと、貴族達の大半が驚愕に目を見開いていた。そんな中、見覚えのある少女を見つけて口元を緩める。無事にパウラは家族に保護されたらしい。後ろにいる顔立ちや髪色の似たご夫妻がクロヴァーラ伯爵家御一行様みたい。
「ねえ、秘密ってそれだけ? オレが北の王家に養子に入った時点で気づかないとさ、遅いんだよね。皇族に嫁ぐなら分家の肩書きだけじゃ足りないから、養子に出たんだぞ。オレと皇帝陛下が結婚するなら、どちらかが女性じゃないとおかしいだろ」
BL系の世界じゃないんだから。けろりとオレが肯定した「皇帝陛下は女性でした」という話に、あちこちの貴族は盛り上がった。なおガッツポーズしてる奴もいるが、婚約者はオレだからな? チートな異世界人のオレを排除して、リアムを射止められると思うなよ!
持てる全能力と聖獣を使って潰すぞ。物理的にも精神的にも容赦しないからな。威嚇を込めてぐるりと見回す。一部の独身が受けて立つみたいだけど、コテンパンにのしてやんよ。
サプライズプロポーズは出来なかったけど、まあオレらしいかな。見上げる先で、カーテンから姿を見せたリアムが小さく手を振る。オレは目一杯振り返した。シフェルが「さっさと片付けなさい」って目で指図してくるが、無視だ。
「き、貴様など」
「さっきから分かってないみたいだね。オレは皇帝より地位の強い聖獣を5匹従えてる。機嫌を損ねたら全国土を一瞬で消せるんだけど」
文字通り地図から消える。ついでに他の国も消えるから、オレの足場しか残らない気がするぞ。にっこりと無邪気な笑みを浮かべてやった。こう言う時は凄むより、笑われた方が怖いんだが……馬鹿には通用しなかった。
「出来もしないハッタリを」
強がるとろり蒟蒻を見せしめにすることにした。というか、誰か引っ掛からないかな……と誘ってみたわけで。鼻で笑う公爵の暴言はありがたい。
「ヒジリ」
『ふむ、任せよ』
直後、足元が消えた。いわゆる穴が空いたのとは違う。真っ暗な穴がぽかっと開く。で……とろり蒟蒻、こと前トゥーリ公爵が吸い込まれた。その穴をわざと塞がないところが、ヒジリだよね。恐怖心を煽るように、穴の底から叫び声が聞こえ……徐々に小さくなって途切れた。
「きゃぁ!」
「うそっ、なんて事」
叫んだご婦人やご令嬢の一部が卒倒したらしい。慌てて夫や家族が支えている。従者や他家の人に抱き上げられたら、お嫁に行けなくなるんだっけ? 頑張れ、男性諸君。貴族の勤めだ。
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