321.ゲスの処分は容赦無く(2)
オレが知る拷問の知識は、ラノベのダークファンタジーを読んだ時に蓄えたものがほとんどだ。あと、ファンタジー映画で、手足がぐにゃぐにゃになった場面も使えるか? 風船みたいに膨らませるのもあったな。それから豚の尻尾が生えたり、治療するフリで間違えて骨折させるくらいか。
偏った知識だが、あの辺を応用すれば、ある程度の数はこなせそう。あと断罪系ざまぁの小説なんかも、多少使える知識があるかも。後でパウラ嬢にも、何か知らないか尋ねておこう。日本人だけど、他の人はそういう小説や映画は知らないと思うし。
チェーンソーで手足切る奴や人形が襲ってくるホラー映画もあったけど、まずチェーンソーが無いからな。恐怖がイマイチ伝わりにくい。
微笑む天使の顔の裏は、血塗れスプラッタのシーンで埋め尽くされていく。さて、
「おろし金って、南の国なら作れるかな?」
厨房で見たのはもっとこう、おしゃれな形だった。テレビで料理上手な芸能人がチーズ削ってるみたいなの。あの形状だと早く削れすぎて、拷問時間が短すぎるよな。手足の先から削ることも考えると、骨を削れる強度も必要だし。
なんかもう、金属を選んでオレが作った方が早い?
「パパ、欲しいものがあるんだけど?」
上目遣いでお願いしてみる。きゅるんと後ろに擬音がついて、花がぱっと開く演出は……さすがに恥ずかしいのでやめておいた。でも国王ハオの脳裏では再現されたかも。
「何でも言ってごらん。何が欲しいのかな?」
猫撫で声の国王陛下に、天使の外見を最大限に活かした笑顔でお強請りする。
「このくらいの、最高に硬い合金が欲しい」
きらきらした眼差しで、まるでダイヤモンドを強請るように愛らしく、武器を作る合金を強請るオレ。げらげら笑いながら、ブラウが転げ回る。
『僕、主を契約者に選んで良かったぁ。今の最高!!』
「ブラウが持ってきてくれてもいいんだぞ?」
「わしが用意させる! おい、あの玉鋼を持って来させろ」
宰相閣下が悲鳴をあげてるが、騎士達は大急ぎで出て行った。あの玉鋼? 期待値を大きくさせる表現だ。
「玉鋼? が来るまで、他の裁判も進めよう、パパ」
この呼び方も慣れてきた。一応王族だからカッコいい渋親父のハオの顔が、嬉しそうに崩れる。木槌を振るって、次の訴えを促した。
「私どもの家は薬作りを専門にしておりました。そのレシピや薬剤、家や薬草畑に至るまで……奪われたのです。怒りと悔しさで父が倒れ、今は病床に臥しております」
悔しそうに語るのは、少年だった。商家や貴族とも取引がある大きな薬屋だった、と宰相から情報が付け足される。訴えが早かった者に関しては、裏事情もある程度調査したらしい。この宰相閣下、有能なのか? これが普通か。一国を支える人だもんな。今までが自由に動けなさすぎて、無能に見えたんだろう。
「なるほどね。相手はわかってるの?」
「レホ子爵家、後ろでニクラ伯爵家が指示を出したと知りました」
知りました……誰に教えてもらったのかな? 心当たりは赤毛で王族の端くれの情報屋くらいだけど。
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