241.東の国を占拠せよ(2)
「ご主人様、何か仕事はありませんか」
シフェルの馬を借りて伝令に立つサシャを見送り、すぐに奴隷のおじさんが声を掛けてきた。確か仕事をしないとご飯がもらえないと思ってるんだっけ? その認識を何とかしたいけど、オレ……元々が引き篭もってたくらいだからね。あまり得意じゃないんだよ。
「とりあえず……体洗おうか」
申し訳ないが、臭うんだよね。あの牢に閉じ込められてたから、どうしても臭う。ご飯を優先しちゃったけど、ここは洗っておいた方がいいだろう。だって衛生的に問題あるだろ? 病気になったら可哀想だし。
さっき屋敷を回ってたライアン達を手招きした。
「この屋敷に大浴場ない?」
「大欲情?」
ドン引きの顔で見ないでくれ。つうか、自動翻訳バグってるじゃねえか。響きが同じだけど意味が大きく違うっての。オレが変態のレッテル貼られるじゃん。
「違う、大きいお風呂。たくさん入れそうな場所でさ」
「ああ、それなら見たぞ。1階の奥だな」
説明したライアンが建物の左奥を指さした。オレは2階を見てたから知らないんだ。奴隷の皆さんを手招きして、簡単に説明した。
「まず清潔にする必要があるから、洗うぞ!」
「「はい」」
返事がいい。気分良く歩き出し、ライアンの案内付きで風呂場についた……風呂場? ここが? 大きく首を傾げ、ライアンにひそひそと尋ねた。
「なあ、ここ……風呂?」
「違うのか」
間違ったなら早めに申告してくれよ。そんな思いで小声にして尋ねたのに、ライアンはけろっとしていた。どうやら風呂と思っているらしい。オレに言わせたら、これはプールだ。似て非なる物なんだが……。
一応豪邸だったし、プール付き戸建てだったんだな。うん。
「つうか、ここ屋外じゃん」
「半分は屋根がある」
「風呂なら温かい湯が溜まるんですから、あっちだと思うが」
ノアがここで参戦。彼も風呂と思わしき設備に心当たりがあるようだ。また奴隷を連れてぞろぞろと行列だ。
豪華な屋敷の中をきょろきょろしながら歩く。ほぼ縦断に近い反対側で見つけたのは、今度こそ風呂だった。想像より大きかったけど……。
「お風呂入ろう」
「入る、ここ?」
ぎこちなく聞き取った単語を繰り返す獣人さんに、彼の知る言語で説明する。体を洗って綺麗にし、病気に罹らないように清潔にすること。他人から臭いと言われないようにすること。説明したオレに、獣人が顔を顰めた。
「どうしても、か?」
すごく嫌そう。
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