205.攻め落とした権利? 放棄で!(2)

 最終的に南の国の処遇が決まらず、かといってオレの意向で併合も出来ない。属国扱いにして、誰か管理者を選ぶ事で決着した。


 王都襲撃の際に頑張ってもらう予定だったリシャール達が役に立たず、ドラゴンは暴走したため予定が狂いまくった。だがこれでリアムのところへ帰れる。土産は東の国の兵士を脅して買いに行かせるか。自分で選びたいから、こっそり密入国すればいいや。


 物騒なことを考えるオレの首根っこを掴んで、レイルが溜め息をついた。


「その顔で何考えてるか分かるが、東の国に関しては攻略方法があるぞ」


「……なんで攻略しないとダメなのさ」


 面倒だからお土産だけ買って帰る。帰るったら、帰るんだ! リアムに「おかえり」ってはにかんだ笑みで言われたい。それから膝をついて手の甲に口付けながら「ただいま、可愛い人」ってキザなセリフを吐きたいんだ! 


 某アニメでやってたし、男装の麗人の舞台でも観た。異世界で美形になったら絶対にやってみたいこと、ナンバー10に入る野望だぞ。世界征服なんて100位以下だ。


 むっとしながら手を解こうと暴れるが、ジャックが向かいで大笑いする。


「猫の子じゃねえんだっ、は、離してやれ、って」


 オレを解放する内容なのに、笑いすぎて呼吸困難に陥った彼に感謝する気になれない。ジャックめ、夕飯のおかず減らすからな。


「お前、東の国は南に味方したんだ。敵だぞ?」


「別に攻撃されてないもん」


「いや、攻撃された」


 思い返してみると、確かに攻撃されてた。それを散らすようヒジリやブラウに命じたのはオレだ。だって、南の民に武器向けたから……別に倒す気はなかったんだけど。


 言い訳はスルーされ、倒した事実だけが重要視された。戦勝国の理屈が通って、敗者の歴史を塗りつぶすって話が目の前で実現していく。


「結局どうするんだよ」


 ライアンがライフルの手入れをしながら尋ねる。彼にとって世界情勢より、相棒の状態の方が大事らしい。命を預けるライフルだから、時間があれば念入りに手入れするのが彼の流儀だった。他の傭兵だって、眠る前に枕元で手入れしたり分解して動きを確認してる。


 物騒なようだけど、それだけ危険な状況を生き抜いてきた証拠だろう。傭兵は最前線で使い潰される駒だったんだ。


「東の国の攻略法があるなら売ってよ」


「高いぜ」


「いいよ、東の国をあげる」


「いらん」


 即答された。レイルの奴、欲がないな。そう思いながら首を傾げると、ぽかっと頭を叩かれた。さっきから気安く叩くが、レイルとオレの身長差から手を置きやすい高さのようだ。くそっ、まだ成長期だから絶対に追い抜いてやる!

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