26.魔法は無効、魔力は有効?(3)
「リアム。一応皇帝陛下なんだから、騎士や侍従を心配させちゃダメだぞ。そんなことばかりするなら、オレはリアムと友達をやめるから」
「嫌だ!! それに一応じゃなくて、ちゃんと皇帝だぞ」
「ちゃんとした皇帝陛下なら、オレと約束できるよな? 今度からこっちに来るときは侍従に声かけて、騎士を一人以上連れてくること」
「……わかった」
周囲からざわめきが起きる。仮にもこの国で一番偉い存在に説教する人間はいないだろう。ましてやリアムが素直に聞いているので、余計に騒ぎは大きくなっていた。
「……キヨは本当に規格外だよな」
「異世界人だから」
「元からの本質じゃね?」
「異世界って、化け物ばっかなのか?」
「変わり者だ。魔力量も異常だし」
ひそひそ聞こえてくる声は、好意的なのか批判的なのか判断に困るが……好意的だと受け止めておこう。じゃないと泣きそうだから。化け物扱いされかけてる。
そんな非常識チートはカミサマに貰ってないぞ。せいぜい顔を良くしてくれとお願いしたくらいだ。魔力量が多いのは、戦時中に集めた分を丸投げした聖獣に文句をいってくれ……ん?
「ちょっといいか? ヒジリ」
『…なんだ、主殿』
今の間は何だろうと考えるより早く目に飛び込んだのは、喉をごろごろ鳴らしながら撫でられるヒジリの姿だった。猫をあやすように喉を撫でるリアムは嬉しそうで何よりだが……誇り高いんじゃなかったのか?
「誇り高くて飼い主以外に懐かない筈の聖獣さんにお伺いしますけど」
嫌味を込めたオレの発言をスルーしたヒジリは、ご機嫌で喉を鳴らし続ける。そのうち寝転がって、腹も撫でさせかねない。
「異世界人に注いだ魔力って、ヒジリが集めた分だけだよな」
頷いてくれ! そう願うオレの想いを知らぬ聖獣様は、偉そうに胸を張って…でも喉を鳴らしたまま答えた。その姿に威厳は欠片もない。
『すべての聖獣が指示された
嫌な方向に考えが当たるのは予言とか予知じゃなく、フラグ回収ってやつですね。現実逃避したい気分で自分の手のひらをじっと見た。この縮んだ子供の身体に、5匹の聖獣がまとめて魔力を放り込んだ――今度はチート疑惑のフラグですか。
「指示された魂がいくつもあったら?」
『今までにそんな経験はない』
言い切られてしまったので、逃げ道は完全に塞がれた。そうか、戦時中で普段より長い期間集めた魔力をすべてオレの魂に捨てた…と。
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