161.卑怯な手も躊躇わないぞ(2)
「セイに一任する」
「最終的な結果が伴えば、手段は目を瞑りましょう」
リアムとシフェルは思い切りがいい。というより、オレの性格を理解して信頼してくれてるんだろう。さっき静まり返ったせいで話を漏れ聞いていたジャックが「手伝うことがあれば、相談してくれ」と申し出る。手を挙げて応じると、傭兵達はぞろぞろと食堂から出て行った。
話を聞いてはまずい意識が半分、残りは孤児院作りの手伝いを申し出てくれたためだ。彼らは自分たちが子供の頃にひどい暮らしを経験した。衣食住すべてが揃わない環境で、仲の良い友人や兄弟を失いながら生き残った連中だ。
孤児院を作ると言ったら「無駄だ」と反対した連中も、結局のところ、孤児の不遇を見逃せない優しい奴らだった。孤児が寒い思いをせず、屋根の下で、食事を得られる場所――手伝いを申し出た連中は無償でいいと言ったが、後でこっそりボーナスを出してやるつもりだった。
働けばそれなりの対価を得るのが、当たり前だから。彼らの心意気が嬉しいから、素直に厚意を受けた後でお礼をするのが日本人の奥ゆかしさだろう。たぶん、オレの知る限りでは……合ってると思う。
「ウルスラはどうする?」
「……陛下がよろしいなら構いません。ただ事前にご説明いただけると助かります」
「うん」
名を呼ばずにベルナルドを見上げる。何度勧めても椅子に座ってくれないんだよな。騎士たる者、主人の背を守るのが云々――そこまでご立派な主人じゃないからね。
「私の確認は不要ですぞ。キヨ様が望むなら、取り潰しでも構いませぬ」
「「え?」」
「いや、そこまで考えてないから。オレの印象ってそこまで非道か?」
顔を見合わせた周囲とオレのぼやきに、場が一瞬で和んだ。が、ベルナルドはおそらく本気で言ったんだ。冗談をいうタイプじゃない。その覚悟は嬉しいので、「ありがとう」と礼を言っておく。試しに椅子に座らないかと勧めたが、やはり断ろうとした。
「話するのに遠いから」
ぽんぽんと空席の椅子を叩く。食事はちゃんと座るくせに、話し合いとかになると斜め後ろに立つんだよ。今後のことを考えると、傭兵連中並みに砕けて対応してほしいんだが。
理由をつけて座らせようとしたら、床に膝をついて「仰せのままに」じゃねえよ。仰せのままだったら、そこの空席に座れ!
『主殿、我も手伝うぞ』
「おう、頼むな」
影から出てきた黒豹に、リアムが目を輝かせる。指差して合図すると、ヒジリはリアムの足元に座り、顎を膝の上に乗せた。彼女を喜ばすためなら、オレは聖獣に芸だって仕込むぞ。嬉しそうに頬を緩める、リアムの愛らしい姿に目を細めた。
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