50.出世払いは高くつく、かも(2)

 レイルの調査結果待ち、この判断は問題がなかったようでシフェルもリアムも頷いてくれた。物騒なお茶会が終わると、シフェルはそそくさと部屋を出て行く。制圧後を引き継ぐ文官や武官を連れて、再び西の国へ戻るらしい。


 足元の絨毯は相変わらず寝心地がよく、ソファに背を預けて絨毯に転がった。当然のようにヒジリが隣で丸くなり、元の巨大猫に戻ったブラウはソファの上に陣取る。上から見下ろす猫の尻尾が目の前でひらひら揺れた。


「ヒジリ、残りの聖獣って何匹だっけ?」


『赤い龍、白トカゲ、金の一角馬ユニコーンだ』


「ふーん」


 なんとなく予感がある。きっとこれらの聖獣に会えば、彼らもオレと契約を望むのだろう。何か規則性があるのか、異世界人だからか。


『主殿の魔力は心地よい』


「うん?」


『聖獣は世界の調整を行う存在だが、自らは常に世界の揺らぎを受けて不安定なのだ。主殿の隣は居心地がいいから、離れたくなくなる』


 やっぱり理由があった。そうでなければ、ヒジリもブラウも初対面のオレについてこない。魔力が多い奴が好みなら、他にもいるのだから。過去の契約数の少なさから、何か法則めいたものがあると考えたが、ある意味予想通りだった。


『聖獣は主を持つと強くなるんだよ』


 尻尾で人の顔を叩きながら、偉そうに上から話さないでくれ。青い尻尾を掴んで引っ張ると、猫パンチが飛んできた。もっとも爪は引っ込めているので、彼なりに気は使ったようだ。


「強く? だって元からそれなりに強いんだろ」


 なぜ強くなる必要が? 尋ねたオレの疑問を違う意味に捉えたヒジリが尻尾で絨毯を叩く。


『魔獣程度相手にならぬ強さはある。主を持つと強くなる仕組みは知らぬが、おそらく主を守るための力が増強されるのだろう―――と、かつて赤龍の奴が言っておった』


 推定の「だろう」からの「○○さんが言ってたよ」の不確定要素がダブルコンボときたもんだ。


「聖獣殿が増えると、呼び名を改めて考える必要が出てくる」


 リアムが唸って考える内容が可愛くて、くすっと笑う。だって、まだ増えてない聖獣を確定要素として考えた上で、呼び方の心配だぞ。オレをかなり過大評価されてる気がした。


「増えない可能性もあるじゃん」


「『『それはない(よ)』』」

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