203.聖獣の契約解除?(2)

「へぇ……そんな仕組みか」


 レイルが感心したように呟き、複雑そうにクリスティーンが眉を寄せる。国を守護する契約の前提条件となった約束を破らなくても、今回はマロンに南の兵の攻撃が刺さった……聖獣マロンには大事件だった。確かに守る気は失せる。


「仕方ない、わね」


 自国では同じ間違いを犯さないようにしよう。心に誓う騎士団とクリスティーンをよそに、オレは唸っていた。北の国は何らかの方法で聖獣を操ったぞ。もしかして?


「コウコは契約継続してる?」


『破棄してないわ。だって主人の母国になるんだもの』


 ほっとして肩の力を抜く。西の国は王女がいるから、ブラウとの契約は継続してるはず。


『主様、僕も契約解除したい』


 小さな手をもじもじさせながら、白トカゲが爆弾発言をする。スノーの契約国は……東じゃなかったか? なぜオレに尋ねる。


「スノーがしたいなら止めないよ」


『本当ですか?! すぐに解除します』


 蛇の尾に似た尻尾をぶんぶん振るスノーは、小さな両手で頬を包んで踊る。小さな後ろ足でくるくる回るご機嫌具合だが、転びそうで危ないので抱き上げた。


『僕は主様に愛されてる』


 ここはノーコメントで行こう。めっちゃ頬がピンクだけど、そういうフラグは不要だぞ。恋愛感情はない。強いて言うなら、愛すべきペット枠だから。


「いま、目の前で大事件が起きてる気がするわ」


 クリスティーンが額を押さえて溜め息をつく。戦場でも紅を引く女騎士は、通信用の魔道具片手にその場を離れた。彼女は真っ赤な色が良く似合う。金髪に白い肌の美女だから、迫力あるな。もしリアムにプレゼントするなら、淡いピンクか。桜色の方が可愛さが際立つだろう。


「レイル、頼みがある」


「なんだ? 裏工作なら任せろ」


「やだな、常にオレが腹黒い策略ばかりみたいじゃないか。そうじゃなくて、淡いピンクの紅が欲しいんだ。出来たらケースも可愛くて、花模様が理想」


「……お前、そんな趣味が」


 どんな趣味だよ。むっとして唇を尖らせると、抱っこしたスノーの前足がぐっと押し戻した。


『主様でしたら、オレンジの方が似合うかも』


「は?」


 そこでようやくレイルの言葉の意味がわかった。もしかしてオレが使う意味で返した……とか? にやにやしながら火をつけない煙草を指先で遊ぶ男に、風の塊を投げつけた。顔にぼふっと直撃したレイルが顔を顰める。


「オレが使う前提がおかしい。リアムへの土産だよ」


 似合いそうだと言った奴、顔覚えておくからな! 後で覚えてろ!!

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