122.準備中も気を抜かないのが一流(3)
「いてっ」
考え事をしていたら腕にコウコとスノーが噛みつき、じわりと赤い血が滲む。彼らに治癒はないので、ドヤ顔のヒジリが舐めてくれた。うう……涙出たからな、今のマジいたか……
「うぎゃああああ!」
ブラウが遠慮なく牙を突き立て、にやりと笑う。叫んだ直後に噛まれた足を振って、青猫を遠くまで蹴り飛ばした。
『主のばかぁああああ……ぐはっ』
叫びながら飛んで行った青猫が、腹から落ちた。べし、という奇妙な音が響いてブラウが動かなくなる。猫は身体が柔らかい動物だし、アイツは普通の猫じゃないから心配しない。つうか、オレの足! マジ痛いぞ。やや……じゃなくて、本気で痛いぞ!!
「ヒジリ、痛い。ヒジリぃ」
鼻を啜りながら強請ると、ふふんと声が聞こえそうな黒豹が足を舐めてくれた。弁慶を齧るなんて悪魔か。青猫を少し見直した評価だが、一瞬でマイナス値になった。
「何かあったのか? キヨ」
建物の2階からライアンが顔を見せる。隣の窓からサシャもこっちを見ていた。
「噛まれただけ」
むっとしながら答えれば、彼らは苦笑いして部屋に引っ込んだ。よくある出来事と流されるのも切ないな。実際よくあるから文句言えないけど。
「これ、どうしようかな~」
にこにこしながら死体を突いた。動かないのは先刻承知――奪ったライフルは物証となるので、レイルかシフェルに渡す必要がある。しかし死体の使い道はないので、うーんと唸って過去に呼んだ小説を思い出した。
そうだよ、それがいい。にやりと笑ったオレの顔は、ヒジリ曰く『真っ黒な悪人顔』だったらしい。しょうがないだろ、黒いこと考えてるんだからさ。
「キヨ、その死体はどうした。それとライフル」
言いながら近づいてきたのはライアンだった。上からのぞいた時に、握ったライフルに興味を持ったらしい。確かに戦う必要がない午後のお昼寝にライフルを持ってる子供なんて、彼の興味を引く要素満載だ。近づいてヒジリの手が届くぎりぎりの位置で止まった。
動物に囲まれたオレは王子様……ならぬ、猛獣に味見で噛まれた小動物だろうか。御伽噺は程遠い状況なので、ライフルを魔法で浮遊させて彼に放り投げる。危なげなく受け取ったライアンは、どっかりと芝の上に腰を下ろした。
銃火器に関してはプロのライアンはあちこち分解しながらライフルを確認し、転がった男の死体に眉をひそめる。それから手を伸ばして男の顔を覆う布をはいだ。
「これはっ……意外と大物だぞ」
どうやらレイル達を使わなくても、子飼いの傭兵さんが詳細情報を知ってるチート展開らしい。ヒジリの毛皮から身を起こし、ライアンに向き直った。
「情報、くれる?」
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