189.人って撃たれたら死ぬんだよ!(2)
「砦を死守するのが仕事だ。見知らぬ奴が突然転移したら撃つだろう」
仕事中、転移魔法陣もない場所に現れた不審な子供……しかもここは戦場。うん、オレでも撃つ――この男は無罪、とはならない。
「なるほど。理解はした。でも納得できない。人って撃たれたら死ぬからな? 普通は死ぬ。だから相応しい罰を与えるのはオレの権利だ」
「「「理不尽だ」」」
「予告なしに帰ってくるボスが悪い」
「「そうだ、そうだ」」
よし、今の発言した連中の顔を覚えたからな! 罰を言い渡す前に、極悪非道な奴扱いされたので、それなりの罰を用意することにした。
「ここに駆け付けた全員で砦の掃除! 隅から隅まで、きっちり掃除しろよ?」
「「「ひでぇ」」」
「寛容じゃね? オレの結界内で前後左右から聖獣に攻撃される状況を耐えるのと、どっちがいい?」
肉体的な疲労か、精神的な苦痛か。いくら結界で守られてるとわかってても、顔の前にコウコの炎とか……恐怖以外の何物でもないと思うぞ。しっかり指先を突き付けて脅す、じゃなくて説得した。彼らは快く、渋々に見えても快く受け入れてくれる。
さすがはオレの部下だ。
合図をするとヒジリが大急ぎで駆け寄ってきた。こういうところ、ワンコみたいで可愛いぞ。同じ猫科でもブラウには期待できない愛らしさだ。黒豹をぐりぐりと撫でて、よいしょと上に座る。最近定位置になってて落ち着くんだが、そういや他の聖獣はどこ行ったんだ。
「本当にこのガキがボスなのか? ジークさんが従ったって?」
ヒジリから解放されて、押し倒された時の埃を払いながら立ち上がった傭兵に、ぐるると黒豹が威嚇する。怒ってくれる気持ちは嬉しいが、落ち着け。ぽんぽんと首のあたりを叩いて、それから耳の付け根をぐりぐりと掻いてやった。
途端に嬉しそうな尻尾が全力で動く。本当にワンコすぎて、抱き締めたくなるじゃねえか。
「まあ疑うのは無理もないと思うよ。どこから見ても綺麗で愛らしい子供だろ」
しょうがねえよ、と呟けば間髪おかず「銃弾を弾く愛らしい子供かよ」と傭兵の笑いを含んだ声が聞こえた。ぎゅっとヒジリの首に抱き着いて甘えたまま、腹の底から声を出す。でも子供特有の甲高い声だと締まらない。
「そこ、聞こえてるぞ!! はい、掃除に行く!!」
号令をかけると、意外にも素直にぱっと散った。もっとゴネるかと思ったけど。聞き分けのいい傭兵を見送り、離れようとしたユハを手招く。抱っこして運んでもらったし、彼はいいや。
顔を上げると、オレに銃弾をはなった男は納得できずに唸っていた。
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