193.異世界の定番、再び(1)
手早くテントや道具をたたんだオレ達は、王都への街道をひたすら歩く。リシャール達は前を歩かされた。傭兵達はまだリシャール率いる南の兵士を信用していない。後ろから襲われるのは嫌だとゴネたのだ。
仲裁に押し出されたオレが双方の顔を立てて、口先三寸で逃げ切った。リシャール達はこの先の道に詳しいから案内がてら、地元の住人がいたら説得したり懐柔してくれ、と。これなら南の兵士が前を歩く理由になる。
途中の街で都度ドンパチは疲れるし、被害が出るだろ? 主に向こう側の街に。こっちが不利になると思わないのかと、レイルがげらげら大笑いしてた。こいつの笑いの沸点、意外と低い。昔聞いた冷酷な悪魔の評判はどうした?
曇り空の下をひたすら歩くが、傭兵達は思い思いに見張り役を交代しつつ進む。気楽な彼らと違い、オレはマロンの背に揺られていた。七五三スーツで、じゃらじゃらと大量の装飾品付きだ。
「だるいぃ、疲れたぁ、もうやだぁ」
口を開けば文句がこぼれ出る。斜め後ろで銃の手入れをしていたレイルが、不思議そうにオレを見つめて……突然足を突いた。
「うん?」
「装飾品を外せ」
「……着飾るんだってさ」
王族らしく、偉そうに見えるよう着飾ったんだけど。そう告げると、呆れ顔で指摘された。
「忘れたのか? お前の装飾品は魔力暴走を防ぐ魔道具の一種だぞ。魔石が使われてるから、魔力を抑えつけて反発するんだよ。着飾るなら近くに行ってからで間に合う」
「……そういや、そんなこと……言われたかも?」
ピアスを開けた時も、同じような説明を受けた。魔力制御のためだとか。あれと一緒か。なら今は不要だな。
なるほどと頷き、ネックレスを外して収納へぽん! 肩こりが解消されたような気分で、髪飾りやらブレスレットも外した。何だろう、すごい開放感だ。
外せるものをすべて片付け、マロンの背で大きく伸びをした。ずっと縮こめてた手足を広い場所で開放した感じがする。首を左右に傾け、肩こりをほぐす様に肩を揉んだ。
「ああ、楽になった」
『主殿! 何をしておるのだ、早く引っ込めよ』
飛び出した足元のヒジリに叱られた。むっとして唇を尖らせたオレの魔力感知の波紋に、巨大な何かが引っかかる。
「何かいる」
眉をひそめてそちらに意識を向けたところ、急接近してきた。真っ直ぐにオレを目指してないか?
警告の笛が鳴る。見張りで散っていた誰かが、接近する物体に気付いたらしい。手入れの終わったレイルが、銃の安全装置を外した。
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