243.空き巣じゃないからな(2)

「では遠慮なく。ここの宝物庫に参りましょう」


「おう」


 なんと、さすがは元宰相閣下。城の宝物庫の位置をご存知とはお見それした。付いていって、お土産に何か見繕おう。小粒の可愛いダイヤのネックレスとかないかなぁ。


 拳大の宝石とか、あとで使い道困りそうだし。砕くと値段下がるからね。この国の民から吸い上げた税金の賜物と思えば、小さいのを功績がわりにいただけば満足です。いそいそとアーサー爺さんの後をついて歩き出した。


 オレのイメージする宝物庫はあれだ。地下室にあって、入り口に番犬の魔物とかドラゴンが立ちはだかってるんだ。で、決められたパスワードを言えないと殺される。あとは王族の血がないと開かない扉もいい。今回はどっちが相手でも、聖獣の主であるオレが開けてやんぜ!


 そんなことを思って階段を踏んだ瞬間もあった。が、アーサー爺さんはてくてくと階段を登っていく。あれ? 方向が逆じゃないか? 普通は地下だろ。


「ここの王族は馬鹿ばっかりでしてな」


 アーサー爺さんが身も蓋もない本当のことを口にした。呆れ顔のジャックも頷く。まあ、義弟君の事件を聞くまでもなく、王族が腐ってたのはわかるけど。


「この塔の天辺に、国宝がございます」


「はあ……」


 なんでこんな盗まれやすい場所に? この世界は魔法があるのに、空中から奪われる心配しなかったのか。ファンタジーでドラゴンが襲撃すると、大体高い塔から壊されてるぞ。財宝を撒き散らす気だったとか?


「煙となんとかは高いところが好きだって、聞いたなぁ」


『馬鹿って言っちゃえばいいのに』


 ブラウがくねくねと身をくねらせながら、足の間を八の字で歩く。もちろんお約束通りに、尻尾と脚を踏んでやった。


『主ったら、僕のこと好きなんでしょ』


 顔を両手で押さえる仕草で訴えるが、それ何の真似? 覚えてないのでスルーさせてもらった。


『主殿、歩かずとも飛べば一瞬ぞ』


『僕もそう思いますぅ』


 ヒジリとスノーが楽をしようと誘いかける。気持ちは分かるが、ズルはやめておこう。高い塔の天辺付近で、ようやく木製扉が出ていた。


「え? 木製?」


 この階段は螺旋で、中央がすとんと開いている。ついでに言うなら踊り場がないので、後ろは階段の途中で足を止めていた。


「何度も危険だと言ったのじゃが無視されてのぉ」


 ぼやくアーサー爺さんが押した扉の向こうは……穴が空いていた。


「これって」


「おや。砲弾でも当たったかの?」


 くるっと180度回る。それから下の方にいる殿しんがりのノアに向かって叫んだ。


「床に穴が空いてたんだってさ! 下に戻って!!」


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