27.自己紹介は大切ですが、手合わせですか?(2)
『我がどう見られていたか、よくわかったぞ』
ぴしぴしと苛立った感じで地面を叩く黒い尻尾に、慌てて両手を目の前で振った。
「そういうんじゃないって。いつもより賢く見えるって意味だよ。普段も賢そうだぞ?」
『……疑問形になっておるが』
許してくれたらしい。ほっとして、機嫌取りに菓子をいくつか渡してみる。意地悪を兼ねているのか、指ごと食われた。痛みに顔を顰めたら治してくれたが、噛み癖を直すのは飼い主の躾だろう。
「セイ、此度の戦は勝ち戦だ。経験を積むために参加するか?」
なんだろう、その学校行事に参加を打診されるみたいな……微妙な誘い方。リアムは皇帝陛下なんだからさ。命令されれば出撃するけど、経験を積むための戦ってあるのか?
「つまり?」
「疑問に疑問を返してはならぬぞ。そうだな、
今の単語にフラグが立った気がする。絶対にその練習試合で何かが起きる。でも参加しなくても、それはそれで騒動が起きる気がした。どっちでも同じなら宮殿を壊すより、敵陣で暴れたほうが被害が少ないかも。
「いいよ。行ってくる」
「部下は増やしておいた」
「ああ、さっき受け取った。30人なんて奮発したな」
「いや、50人はいるはずだが」
「「え?」」
互いの認識にズレが生じて、同時に首をかしげた。するとスレヴィが笑いながら口を挟む。
「私が把握している数は50人です。傭兵中心ですが、すべて赤い悪魔の手配ですから信用できるメンバーだと思います」
「レイルの手配なの? じゃあ安心だな」
傭兵の中に伏兵がいて後ろから撃たれる――漫画とかでよくある展開だ。フラグの嫌な予感はこれじゃなかったので、一安心して紅茶を飲み干す。すぐに注がれるお茶に、今度はレモンを放り込んだ。
「赤い悪魔をご存知ですかな?」
「レイルはオレのナイフと情報戦の先生だし、出会ったときに銃を借りた仲かな」
貴族は気位が高いもので、公爵なんて地位にいればなおさらだと思っていた。しかしシフェルの兄スレヴィはまったく気取った様子がない。堅苦しい言葉や丁寧な物腰は確かに貴族っぽいが、見た目は美形の熊だ。大柄で威圧感はあるが、笑うと目尻の皺が優しそう。
シフェルを良く知るから余計に気安さが先にたった。
「彼が銃を貸した、と?!」
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