981話 鬼に金棒聖女に聖剣


「あっ、おかえりなさい。ぜんざい用意してあるので皆さんで食べてくださいね」

「「「「「えっ?あ、はい…」」」」」

 え?人ン家で何してんの?という顔をしながら神隠しの家から向かいの家へと移動する5人。

「あっ、ここは特別に貸してもらえることになった空き家だから勘違いしないでね?」

「いやあの、事前に聞かされてなかったんですけどぉ…あと、そちらの女性は?」

「皆さんの命の恩人、玉藻さんです」

「「「「「はああああっ!!?」」」」」


 帰ってきた5人にぜんざいをだして食べ始めてから暫くして護衛士官さんが戻って来た。

「おかえりなさい。大丈夫でした?」

「はい。ただあれは境界ダンジョンではなく何者かの胃の中でした。およそ1キロ四方の1つの部屋で生存者はいませんでした」

 突入班全員がその報告にギョッとした顔をした。

「一応ダメージは与えていますが、討伐には至っておりません。超火力で破壊すれば消失するかとは思いますが、最低でも司令クラスの超火力が必要です」

「あー…そこはうちは火力が」

 僕の所の欠点はただ一つ。火力が足りないことだ。

 ちーくん達白獅子がいるから実際問題は無いし、箱庭決戦時には相応の武装展開が出来るから問題は無いけど、派兵戦闘員がね…

「呼びました?」

 ひょこっと佑那の後ろからジャンヌさんが姿を現した。

「なんで火力って言ったら貴女が出てくるのかなぁ!?あとどっから出て来たの!?」

「力こそパワーな私ですよ?」

「やう゛ぇえ…反論できない歴史的事実が滲み出ている…」

「しかもキョトンとした顔で言われると…」

「脳筋聖女ってアリなのか?」

 みんなが困惑している中、僕はジャンヌさんに鞘に入った剣を手渡す。

「えっと、じゃあ…これであのトンデモ空間を斬って来てください」

「お任せ下さい!」

「最悪の場合、私も出よう」

 課長も手を挙げた。

「えっと、課長はゲート前で待機していただいても?」

「ん?中に入らない方が良いのか?」

「はい。多分、この剣を鞘から抜いたら課長、立っているのがやっとだと思います」

 待 っ て!?

 みんなが同時にツッコミを入れた。



 とりあえず課長とジャンヌさんはあの家に行って貰って僕が説明をする。

「あの剣は神聖水晶と神銀で作った儀礼剣なんです。攻撃力はありませんが…殲滅力はあります」

「いやあの、殲滅力って…攻撃力と同じでは?」

 紅葉さんがツッコミを入れてきた。

 まあそう言いたくなるのは分かる。

 でも、攻撃力は本当にないんだ…

「あの剣は魔物を斬る神聖特化過ぎてそれ以外の物は斬れないんですよ」

「なまくらトいう事ですカ?」

「いえ、素通りします」

 全員の表情が強張った。

「あの、それは宝具とか、神具と呼ばれる物ですよ!?」

「伝説にも斬りたい物だけを斬る剣というのがあるんだけど!?」

 ミシェルさんと香也が叫ぶけど、そんな大層な物では無い。

 だって対象は邪なモノ、魔物。

 それ以外は斬る事すら出来ないんだから。

 唯一の例外は同一物質だからこそあの剣と鞘が存在する。

 力が外に出ないように結界でコーティングしているけど…箱庭の外だと何日保つかなぁ…


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