841話 強権と国家主権
SIDE:世界
それは全世界の首脳へ同時に通達された。
世界5カ国の犯罪組織が神国を騙って下らない喧嘩を売っているようなのでまずは関係者及び資金源含め全てロックを掛ける───と。
殆どの各国首脳は首をかしげる。
何故自分らにまで伝えるのか…1時間もしないうちに世界9カ国の金融機関百数十行が相次いでシステムダウンを起こし、警告文と共に合計十数万人もの口座が凍結され、解除不可能状態になっていた。
「権力を用いて強制的に現金を引き出した場合、神国との敵対行為と看做す…か」
銀行に送られている警告文と口座凍結者リストを見ながら磯部総理は小さくため息を吐いた。
緊急で開かれたオンライン首脳会議は半数以上が参加をし、意見や怒号が飛び交っていた。
『これは一体同いう事ですかな!?』
『国家経済が脅かされていると銀行が夜中にも関わらず電話を寄越してきたのだが』
『神国は世界の覇者にでもなったつもりか!?』
『…覇者も何も相手は神なのだが?国の代表者として発言をしているんだろうな?発言は撤回出来ないと思った方が良いぞ?』
『っ合衆国はどうなのですか!?』
『現在調査中だが、3行が警告を受けているとの事だ』
『日本は!日本はどうなのですかな!?』
「…現在確認中ですが、分かっている範囲で大小5行で警告を受けているようです」
磯部がため息を吐きながら資料を見る。
「警告文にありますが、犯罪組織の三親等はロックが掛かっているようですね…神国の名を騙った犯罪者がここまで多いのは驚きです。個人の犯罪者から国際犯罪組織まで…ここまで野放しだとそれは面子を潰されたと言いたくなりますな」
磯部の台詞に各国の首脳は黙り込む。
実際世界各国の治安はかなり悪化しており、詐欺などの犯罪は騙される方が悪いと殆ど放置しているのが現状だった。
「恐らく今回は警告なのでしょうね。そしてもしその次の段階に突入したら…我々は落第点をつけられる可能性が出てくる。治安すら維持出来ない国家…我々は今それを問われているのではないでしょうか」
磯部の言葉に賛同する者はそこまで多くは無かった。
大半は内憂外患でかなり疲弊しており、国としてギリギリ…といったところも多いのだ。
努力ではなく結果が全てなのはこの会議に参加しているほぼ全員が理解している。
しかし現状どうしようもない事もあるのも事実だった。
『…我々は州警察と軍警察、連邦捜査局合同で治安維持及び今回の事に当たるよう指示を出した』
『うちも銀行から提供されたリストを元に専門チームを組んで事に当たるよう指示を出した』
「私も同じく各銀行にリスト提供をお願いし、そこから関係各所一斉に捜査するよう指示を出しています」
日本を含めた3カ国が相次いでそう発言した事により各国は口を噤む。
ただ、
『うちはそう言った事をする余裕すらないものでね。神様が犯罪者に罰を下す?ありがたい事じゃないか。その部分は神様方にお任せして我々は治安維持に努めますよ』
ある国の首相はそう言い残し通信を終えた。
「───国として、神国に喧嘩を売っていると判断される可能性もあると思うのですが、皆さんはどう思いますか?」
磯部のその問いに答える者は誰もいなかった。
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