868話 藤岡、現地にて


 SIDE:藤岡


 空港に降り立ち、護衛部隊と共に目的地周辺まで向かう。

 近場の村で小休止し、巽を待つ。

 そういう計画だった。

 現在、その村へ向かう途中で全て黒い部隊から襲撃を受けている。

 私を乗せていた軍用車両は横転し、他の車両も半数近くが大破、炎上している。

「貴方達は至急引き上げてください!」

「しかし貴女が!」

「私は巫女様の守りがある!現に今も相手の銃弾を弾いている!仲間を収容して早く引き上げろ!」

 語気を強め

「ッ、すまない!すぐに応援を呼ぶ!」

「それよりも後から来る巽の守りを厚くするよう要請を!」

 私はそう叫び、槍を振るい黒い兵士を数体、切っ先で斬り裂き敵部隊へと突っ込む。

 相手は2、30名。幸い攻撃が効かないわけでは無さそうだ。

 背後で自身の乗っていた車が爆発する。

「さて、ここをまずは制圧しなければ話にならないわけだが…応援は可能か?」

 弾丸を避け、槍を振るいながら影にいるであろう彼女に声を掛ける。

『ええ、可能よ』

 返答内容に違和感を覚えたものの、戦闘中だけにそれ以上聞く事はなく戦闘を再開した。




「第一方盾隊、第二方盾隊回転陣展開し前進!」

 重装救命官20名が円陣を組み大盾を構えて前へと進む。

 黒い部隊は射撃どころか砲撃まで行うが重装救命官達の前に展開されている高速回転した金の盾が全てを弾く。

「火力充填、光の掃射ラン・デミュ!」

 救命師団のメリアが右手に持ったナニカを握りしめ、そう叫ぶと上空から何百発もの光の槍が降り注いだ。

 黒い部隊はその光に穿たれ、消滅していく。

「流石ボス。大盤振る舞いだ!このまま進み、前線基地構築まで行うぞ」

 メリアの台詞に部隊員達が盾を鳴らして返す。

「……ぇえー?」


 決死の戦闘はおよそ6分でただの殲滅に変わった。

「ああ、応援は応援でも応援要請か…それならはじめから出していれば軍に犠牲者は出なかったのだが…全て巫女頼りの状態がマズイという事か」

「ああ。本来なら我々は出る予定はなかったが、こうも殺意が高いとそのリストバンドがいつ駄目になるか分からんからな」

 メリアがそう言って息を吐く。

「相手の攻撃を分析して分かった事だが、邪属性ではなく負属性であり虚属性だ。通常結界では簡単に貫通されてしまう…白城隊で正解だった」

「と、いうと…?」

「通常であれば結界という箱、もしくは膜で防御をしたりする。強力な物は空間に作用するが、大抵は前者だ。

 ただ今回の攻撃はそれを易々と貫通する全てを反転させる負属性と全てを無に返す虚属性だ。

 そのリストバンドの結界は年輪のように幾重にも結界を出力する代物だから助かっているし、白城隊の部隊は守りのエキスパート…即座にそれら属性に対応した防壁を展開したというわけだ」

 握りしめていたものを開いてみせる。

「ただ、相手の攻撃は凄まじく事前に渡された我等のエネルギーは残り半分だ」

 そこには5センチ程度の水晶があるだけだった。

「同じレベルの襲撃であればあと2回は耐えられる。まあ、2回目は半壊だが…さて、前に進もう」

 手早く指示を出したメリアに促され私も歩を進める事にした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る