818話 小さな発見と大きな間違い


「おはようございます。緊急で配信を行います」

 僕はいつものように配信を開始し、


『巫女様大変!』

『もう神に頼らなくても十分!だから引っ込んでw』

『新しい技術によって普通の人でもモンスターを倒せるようになったから!』

『神との決別をその研究所が大々的に発表してるんだけど』

『多少の訓練をすれば誰でもグールや小鬼とかを倒せるって!』


 コメント欄が一気に流れる。

「成る程…それを勘違いして神や精霊に喧嘩を売った結果世界が滅びようとしているんですか…」


 コメント欄が止まった。


『あの、巫女様それどういう事ですか?』

『いやいやブラフでしょ?』

『冗談きついっすよ』

『あー…神との決別って言っているわけだから喧嘩売ったようなモノだね』

『まさかとは思うけど、緊急配信って…』


「えっと、とりあえず僕が今聞いた話をします」

 僕はそう前置きをし、ゆる姉様とせお姉様の話をそのまま伝えた。

 序でに精霊さん達が居なくなった場合の被害についても伝え、最短で1ヶ月ほどで分かるだろうとも合わせて伝えた。


『は?ただの嫉妬だろ?』

『だから合衆国さんは今回のデモとかに対して徹底的に弾圧加えたのか』

『民主主義何処行ったと思ったら国民守るためだったとは…』

『いやいや、精霊に対して俺ら喧嘩売ってないだろ』

『頑張っている上司を大声で罵倒された側の気持ちは?』

『野菜工場とか作れば問題なし!中条に頼めば良いよ』


「それと、コメントの中で訓練すればとあったんですが、それって遠隔でもできますか?必ず人が介入していないと駄目ですか?」

 僕の問いに対してコメント欄は一瞬沈黙したが、中に有識者が居たのか書き込みがあった。


『人の思念を増幅させてモンスターを倒すため、人と武器が接触していなければならないし、訓練は必須との事です』


 その回答で僕は「ああ、早まったんだこの人達」と思わず呟いた。


 当たり前の話だけど、そう言った研究はあちこちでされている。

 そしてその中で研究成果が一時的に出たところと全く出なかったところがある。

 それらの資料を中央本部からの依頼で解析したことがあるけど…結論としては非常に単純かつ悲しい2択だった。

 およそ5年にわたる研究資料を紐解いた際の例で言うと、未成年者720名を集め、瞑想中の脳波の計測をし、エクソシストが悪魔払いをしている時の脳波値に近い者を選抜。テーザー銃のようなタイプの退魔銃を開発…したのだけど、増幅させても伝導率が悪かったと言うお粗末な結末だった。

 しかしその5年後に改造したその銃を同じ選抜した者達で使おうとしたところ、およそ8割が神聖職であり、2割は職業とは関係の無い天然の退魔師の卵だったという事が分かった。

 何が言いたいのか分かりにくいかとは思うけど、そもそもそれらのどちらかの能力がない者はそれを使う舞台にすら立てないのだ。

 そして現在全員が使え、訓練次第という事で可能性が高いのは…全ての生き物に対してゆる姉様方が聖属性を付与しているからである。

 その部分を見落として神に喧嘩を売ったとなると…加護を取り上げられた際に待ち受けているのは数パーセントの天然退魔師の卵もしくは現役退魔師以外生き残れない現実と言う事になる。

 ───職業やスキル無視して妖怪を倒せるような香椎のお爺ちゃんクラスなら問題無いけど…そんなにいないと思うし。

「えっと、今まだ閲覧出来ると思うんですけど、中央本部公開資料で半年くらい前に日本探索者協会から『2014年3大学共同研究の結論と適合者及び思念伝達武器の有用性と落とし穴』というレポートがありますのでそちらを見て戴ければ何が言いたいのか分かると思います。

 そこで提示された5種類の思念伝達型武器とは違う仕組み等であれば問題無いと思います。

 あと、最近神様方が生物全体に聖属性を少し付与した事を忘れていませんか?それを取り上げられてもその武器が全人類に使えるのか、更に言えば職業システムを凍結されても全人類が生きていけるのかまで考えた上で神様に喧嘩売っているのか知りたいです。

 一部地域はもう手遅れなんですけど…御免なさい。それに関しては僕はお力になれません」

 怒られると思うので先に謝っておく事にした。


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