705話 兄が来る
『お父様。外されたって、何でしょう』
いつの間にか戻って来たリムネーに僕は首をかしげる。
「どういう事?」
そこからリムネーとゆる姉様との話を聞く。
ああ、そう言う事もあったのかぁ…と納得した。
「多分だけど、リムネーはしっかり聞いておいた方が良いかな」
僕は違和感の点と点、そしてそれを繋げた推測をリムネーに話すことにした。
「僕はやりすぎたんだと思うよ」
『やり過ぎた、ですか?』
「うん。やり過ぎたんだと思う。神様方の裁定を何度も覆し、神様方から恩を受けすぎたんだ」
リムネーは少し難しい顔をし、首を振る。
『…よく、分かりません。裁定を覆したのは納得ずくですよね?それに神様方からの恩に関しては…』
そこで何かに気付いたのかリムネーは僕を見る。
「神様の復活や恩は神へと格上げすることで…というのは僕の体と思考を人から神に寄せる。これで僕を神に近付かせてややこしいことをさせないように。
でも僕は人であり続けた。神様方が僕を消して神の座に無理にでも上げなかったのは優しさ、恩、借り、兄さんと…色々な事情があったからだろうね」
ゆる姉様とせお姉様が主導…というよりもそうせざるを得なかったんだろうなぁ…木の状態含めて色々マズイと察して。
お二方ともずっと僕を気に掛けていたわけだし。
ミツルギ姉様に気付かれないように細心の注意をしながらも大義名分を得るまで色々動き回っていたのはいつもあのお二方だったから。
『だから急にお父様の対応が変わり始めたと?』
「…リムネー、僕はね、自分の人間的な思考が変わっていくことは分かっていたし、直そうと思えば直せる。でもね…僕が人として出来る限界はとうの昔に越えていたんだ。ラヴィ姉さんにサポートされていても───」
どうして、ヒトを、守る必要がある?
その言葉は、誰に言われた?
僕は、人であり続けなければ…
『お父様!落ち着いてください』
リムネーの悲鳴に似た声で我に返る。
「───ごめんね。そんな状態だったけど、神様方は人よりも人らしかったよ。僕をずっと心配して、人の汚い部分を関わらさないように頑張って、僕を休ませようとして…
分かっていたからこそ僕は神国に関しては無関係を宣言してあくまでも神々に奉仕するものという立場に拘り、その代わりに僕をよく知るラヴィ姉さんとリムネー達に託したんだ。
姉さんには怒られたけど、僕の人としての状態は限界が近いんだ。体が順応しているとかではなく…神国に僕に関する拝所を作ったでしょ」
『……』
「変則現人神化と言いたい所だけど、人や何故か神様方が僕に祈りを捧げるから、尋常じゃない位の神気がね…僕を強制的に神に押し上げようとしているんだ。
ボロボロの人としての僕と、限界を超えて流入してくる神の力…この箱庭に還元するのも限界があるし、料理に還元するのも限界。そろそろ本当に神様にならざるを」
「ほぅ?」
『あっ』
後ろから声がした。
「友紀も、少し鍛え直す必要があるようだな」
「え?」
優しく肩に手を置かれた。
「器をもう少し広げれば良い。なぁに、修行中は神だ人だ何だと馬鹿なことを考えられないだろうし、終わればそんな悩みは解決される」
そこにいたのは兄さんだ。
「お断りしたいなーなんて…」
「あははは…だが断る」
「マイヤ、白城さんかメリアさんに連絡して明日、明後日緊急で休むって課長に伝えるように「さあ、本部に跳ぶぞ」伝えてぇぇっ!」
僕は兄さんに捕まり、本部へと強制転送された。
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