513話 先手、質問 後手、説明①
「えっと、僕はどうすれば?」
ゆる姉様に問う。
「簡単なインタビューを受けた後、いつものように神域でお夕飯の準備をしてもらって、それを撮影するとか?」
「僕最近箱庭で作っているんですけど…みんなでご飯4升食べるからお釜使っているんですよ?」
ザワッ…
四升炊き。しかも釜炊きというパワーワードに大変さが分かっている人々は顔を引きつらせる。
「まあ、配信でやったことと同じようにすれば良いかな…お二方は今日の夕飯は?」
「リクエストしても良いの?」
遠慮がちに聞いてくるせお姉様。
ここで「聞くだけですが」って言ったら泣くだろうなぁ…うん。自重。
まずはスタジオで皆さんと一問一答をしてから…と言う段取りで行うらしい。
そして簀巻きにされている人と男の人はゆる姉様に連れて行かれてしまった。
僕らは配信スタジオの隣、いつも実験とか色々やっている多目的ブースに入って質問を受けることにした。
皆さんだいぶ落ち着いてきて───いないですね。
無茶苦茶挙動不審だ。
多分聞いたらいけないこととか、聞くことによって神様方の機嫌を損ねたら…って言う感じかな?
「僕の事であれば特にNGはありませんよ?神様方のことの場合は止めに入ると思いますのでどうぞご自由に」
そう言うと、一人が挙手をした。
「あの、不躾ですが…神子に選ばれた理由などを伺っても宜しいでしょうか」
「えっと、悲しいですが偶然です。たまたま僕の祈りは神様方に綺麗に届いた。そして日々感謝を捧げていた。幼い頃生死の境を彷徨っていた際に神様にお目にかかった。神様方に気に入られた…これらの偶然が複合的に重なった結果です」
言葉にして思う。どれだけの偶然が重なった結果なのか。
たぶん、このうち二つくらい違っていたら僕は死んでいただろうし、神子は兄さんがなっていた可能性が高いかな。
「…ありがとうございます」
質問された方がお礼を言うと、別の人が挙手をする。
「神様方は何故今になって大々的に動き足したのでしょうか」
あぁ、言い方は違うけど前に似た質問はあったなぁ…
苦笑してしまう。
「その質問に答える前に、皆さんご存じですか?ダンジョンの侵攻は最近ではなく、かなり昔からあったという事を」
僕の台詞に全員が「えっ?」と虚を突かれたような顔をした。
「この部分は人類全体の問題となるのですが、数百年から千年以上前はある程度意思疎通が出来ていたらしいのですが、ダンジョン側や魔の者がそれらを少しずつ阻害。
神託等が聞こえづらくなったり、聞こえなくなった権力者サイドが色々誤魔化してはいたものの、文明の発展と共にそういった類を否定する動きとなっていったようです。更には時折神託を受け取れた者に対しても詐欺やペテンのレッテルを貼ったことで彼等は姿を消しました。
そして更に現代。ダンジョンが姿を現し、それに対抗すべく神々が力を合わせて色々対策や加護を与えた…にもかかわらず人間はそれをダンジョンが与えてくれた力だと喧伝して回った結果、神々の3~4割はこの世界から離脱。現在は神域や神仙域で地球がどうなるか見守っているらしいです。
ただ、それをよしとしない神様方や精霊、一部妖精が必死にダンジョンの侵攻を止めている中、先にも言ったようにたまたま僕が神様への感謝や祈りをクリアに届けることが出来たんです。
それを突破口にすべく神様方はこのマンションのフロアの一室…実はダンジョン化しかけていたのですが、力を合わせて奪取。神域化することで前線基地兼保養所にし、神様の回復要員として僕をここに置いた…と言う訳です。
つまりは神様方はずっと戦っていたにもかかわらず、人が相手の術中にはまり敵の分断工作は成功。
異世界の神様方がこの世界の神様方を連れ出す為に動くレベルまで地球は追い込まれていたのです」
───いや、この程度で絶句しなくても…
もっと重い内容はいっぱいあるのに…
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