514話 先手、不躾な質問 後手、恐ろしい回答

 大学生くらいの男性が手を挙げた。

「あのぉ、神子に選ばれたのが偶然が重なったとか、祈りとかがクリアとかは分かったんですが、今は直接やりとり出来るわけですからもう神子の役目は他に任せるとかは考えなかったんですか?

 料理とかはそれこそプロに任せれば良いんじゃないかと………」

 あ、これはピンポイントで殺気を受けていますねぇ…顔面蒼白で呼吸困難になってますよ?



「僕が作る料理は料理人からみて酷いモノかも知れませんが、料理をしながら召し上がって戴く神様方への祈りを籠めながら作っています。

 神様方が仰るには捧げ物の一環として、どれだけ想いが籠められているかも重要とのことなので…一度京都で職人の方に作って戴きましたが、あの時は料理長一世一代の大仕事と言うことで頑張って戴きましたし」

 再びざわめく報道陣。

「確かに凄く美味しかったけど、籠められている想いや祈りはゆうくんが断然上だからね!」

「───だそうです」

 態々大声で言わなくても良いのに…なんて思いながら僕は苦笑する。

「……以前、動画を拝見した際、とんでもない量を簡単に作られていましたが…アレでも本職には届かないと?コメント欄に本職の方も絶賛していたようでしたが」

 別の記者さんがそう言ってくれた。

「料理人や世のお母様方はもっと凄いと思うので僕なんて…」

「…いや、あの量をあの技能でバンバン作られたら料理人は頭抱えるレベルだと…」

「宴会時以外はいつもの事ですけど…毎日朝晩のご飯は作っていますし。ああ、調味料の消費が恐ろしいですかね…」

 僕の料理動画を見た事のある記者さん達はあり得ないって顔している…


 また一人の男性が手を挙げた。

「巫女様に権力が集中しているとのご意見がありますが、それについてどう思われますか?」

 ??

 いっている意味が分からない。

「僕に権力が集中しているんですか?」

「少なくとも街頭アンケートの結果ではそう出ているのですが…」

「どんな権力なのでしょうか…あ、結構前に協会の会長があまりにも酷い発言をしたことにせお姉様…祓戸様が怒ってスキル停止をした際にそういうことが起きないようにと特別に外交特権は戴きましたが…それのことでしょうか…僕それ以外融通して貰っているのは…パッと思いつかないのですが。神様方のお酒代含め自腹ですし」

「えっ!?」

 またざわめく記者さん達。

 まあ、手持ちのカメラは全員三脚で固定しているから手ぶれは無いと思うけど、そのざわめきが煩いと思うんだ…

「更に言えば、このフロアについても協会…と言うよりも前協会長の派閥が僕の個人情報を外部に流出させて僕の元の住居を出なければならなくなった代償ですし、

 ここも先程言ったようにダンジョンなりかけの訳あり物件であり、何かあった時のカナリア役みたいに使われていたわけで…

 ここを買い上げたのもキチンとした手順に則って即金で買いましたし、スタッフの方々は僕が再雇用していますし…全住居者の方々に対しては退去勧告等は行っていませんでしたが、不安がって我先にと売却して退去されたようで…

 クレームどころか住居者の方々にお目にかかったのは片手で足りるくらいなのですが…ああ、下の階にお住まいの職場の同僚や中務省の方以外では、です」

 いや、だからなんで動揺してるの!?

「ちなみにここの買取に関しては管理会社に連絡後神域の件もあるので中務省に協力いたしましましたが、支払等は巫女様が個人で行っております」

 伊都子さんがフォローしてくれた…んだけど、えっ?なんで顔色悪いんですかねぇ!?

「あっ、えっと…出て行けというのであればどこか別の所に土地を購入し、神域を撤去してそちらに移りますよ!?」

「そうすればここの制御は失われて突然変異型ダンジョンが出来るが、それでも構わぬのならすぐにでも移ろう。伊都子、場所の選定を…もういっそ国外でも良いか。この国を甘やかしすぎたようだしな…国外の不動産もリストアップするのだ」

「!?はいっ!」

 せお姉様!?なんでそう喧嘩腰なんですかねぇ!?


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