778話 おうたリクエストの時間
兄さんが旅立った。いや、悪い意味ではないですよ?
なんかいくつか準備はしてあるって言っていたけど、それが一番怖い。
無茶しなきゃ良いんだけど…時間のズレを越えて帰ってきそうだし。
「さて、午後の配信をします」
『まさかの2回攻撃w』
『ある種のお仕事w』
『お金を投げさせてくれないんだよなぁ』
『それがOKになったら一瞬で億行きそうw』
『巫女様!歌って踊るのは如何でしょうか!もしくは過去動画解禁』
『即身成仏者もしくは解脱者、昇天者が出るぞ!?』
『キラキラお目々の極道は暫く見たくないなぁ…』
『極道の方々もこの動画見ているという事実が』
「うーん…あっ、そう言えば隣のスタジオのセット弄れるのってタイムさんだけ?」
「配信中に私に聞くの!?…直接教わっていたのはタイムだけよ」
フィラさんにそう言われ、少し悩んだ末に隣のスタジオに行った。
何もないがらんどうのスタジオ。
「えっと、皆さん。僕に歌って欲しい歌のデータリストがみこチャンネルにあると思うんですが、見ていますか?」
『勿論!』
『色々良い歌があるよね!』
『歌って欲しい歌が沢山!』
『クォリティが凄いんだよ…』
『野生のプロが多いんだよ』
「えっと、これから5分後にコメント欄に番号を振りますので、番号111番の歌を歌うというのは…どうでしょう?あっ、練習はしますよ?30分ほど。今回は曲も踊りもないアカペラになるのでそのつもりでお願いします」
『なんか凄い無茶企画してませんか!?』
『まさかの巫女様安価』
『ヒャッハー!安価だ!』
『急げ!よさげな曲を探すんだ!』
『曲数がエグいんだが!?』
「はい。5分後に番号振りますねー」
そう言って僕はスタジオの中心に立ち、発声練習を始めた。
5分ほど経ち、コメント欄の設定を弄る。
「設定完了しましたので気を付けてくださいねー」
『1.やっぱり巫女様には女性的な歌い手の曲が良いと思うんだ』
『2.ナンバリング入ってる!やべぇ始まった!』
『3.まだ余裕はある!皆の者、捜せ!』
そこからコメント欄が急にゆっくりになった。
「うわぁ…いつもこんなゆっくり進行だったらなぁ」
数分が経ち、偶に曲名が出るものの、まだ番号は60番台。
偶に愉快な曲名が出るものの…って、一気に早くなった!
『103.菩提樹』
『104.ときめき☆みこぴょん』
『105.神宴の園にて』
『106.HOPE・巫女の願いと思いの行方』
『107.ダンスダンスうさ巫女神社』
『108.それはきっと美しい月だから』
『109.ときめき☆みこぴょん』
『110.月のない闇夜の神社にて』
『111.HOPE・巫女の願いと思いの行方』
『もう一度、会いたい』
『甘々巫女茶屋』
『巫女猫巫女猫三毛猫にゃんこ』
『ふぉっくす巫女だんしんぐ!』
『月のない闇夜の神社にて』
『なんでイロモノ率が高いんですかねぇ?』
『闇落ちスナイプあぶねぇぇ!』
『焦った人達が100番手前で大量にw』
「……90番から111番まで8秒って…まあ、普段の爆速よりはマシかなぁ…えっと、HOPE・巫女の願いと思いの行方という曲ですか。検索してみますね」
僕はタブレットを取りだして検索をする。
「あっ、これ切ない系の歌…あれ?これアカペラキツくない?」
しかもこれ巫女にゃんことかじゃなくて僕の歌だ…
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