779話 巫女(神聖職者)の願いと思い(苦悩)の行方


『HOPE・巫女の願いと思いの行方』という曲の内容は、

 棄てられた神社に住まう神と巫女達の物語だった。


 人里離れた山奥にある忘れられた神社に住まう巫女達と神が静かに暮らしていた。

 人々は神を敬うことを忘れ利益だけを尊ぶ存在へと成り果てる中、巫女達はただただ神を敬い皆に感謝しながら生きていた。

 しかし、世界はそんな巫女の一人に試練と使命を与えた。

 力の付与とそれに見合った試練。そしてまさに崩壊しかけている世界の救済を。

 巫女はその試練と使命を知らない。しかし世界中はそれを知ってしまった。

 神は巫女を護ろうとするが世界は力を持つ巫女に義務と責任を押しつける。

 巫女はひたすら祈り、解を模索する。

 ただそれでも人々はより多くを求め巫女の人格を否定する。

 それが当然かのように。

 他の巫女が助けるも泣き言を言わずひたすらに神へ奉仕し、職務を全うする。

 神の存在を否定する世界に神はついに怒り、その権能を停止する。

 世界はこれまで当たり前だったことが出来なくなり、怯え戸惑い巫女に何とかしろと強要する。

 巫女はただひたすら神へ許しを請い静まるよう願い奉る。

 自身の怒りが何故巫女を傷付ける事になったのか分からず困惑する神。やがて世界の悪意を知り神は他の神々を頼り救いと制裁を行う───


 という僕のここ最近の流れに似せたストーリーです。

 長いって。

 8分あるよ。

 アカペラで歌うし間奏ほぼ無視したら5分ちょいでいけると思うけど…

 これ、色々籠めて歌うの?

 多分絶望する人でてくると思うよ?

 だって言霊使って、更に想いをぶち込んで歌うからね?

 アカペラだものしょうがない。

 これ作ったの誰なんだろう…なんか僕の事よく知っている人な気がするんだけど。

 おっと、練習練習。まずは覚えなくちゃ。


 15分経過


 メロディラインは…あー、益々身内の犯行説が。

 無茶苦茶歌いやすいですよ?

 僕がよく知っている歌のメロディーラインのパターンだ。

「~~♪、~、~~♪」


『…いやあのマジで巫女様あの歌詞覚えたん?』

『初手アカペラは鬼畜過ぎやぞ?』

『スナイパーが身内か神様説?』

『だとしてもこの内容は巫女様あまり歌いたがらないタイプだぞ?』

『確かに。まさに今の状態そのものですし』

『皆の者、覚悟は出来ているか?私は出来ている』

『巫女様最終調整に入ったな』


 25分経過


 うーん、何となく最後が引っかかる。よし、ここを少し弄ろう。


 30分経過


「───はい。ではこれから歌います」

 僕はタブレットをしまい、目を閉じる。

 僕はただ静かに感謝を捧げて生きてきたかっただけ。

 力は本来必要ではなかったのに、貴方がたが見下し、虐げていた方々であれば誰もが持っている力でした。

 特別と言いながら良いように使っていた方々も同罪です。

 我々は目先の利益のために消費されて良い者ではないのです。

 それを知っていながら見て見ぬフリをした万人に対し───これから言葉を紡ぐ。


 静かに、語るように歌い出す。

「何故、求めるの、この力を もう、無用なんて、嗤ってたのに───」

 紡ぐ、紡ぐ。

 僕宛コメント欄には「全ての神聖職者の願いという裏タイトルがあります」と書かれていただけに、全力で歌わせてもらいます。


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