69話 TS化した僕は胃が痛い

「姫様!?」

 頽れた僕に巽さんが慌てる。

[大丈夫です。ただ、ゆる姉様が犯人特定して報復しておくとのメッセージが…]

「流石女神様です!」

[えぇー?巽さんもそっち側だったぁ…]

「今回は直接襲撃されたわけですから、報復ということですね。しかしどの範囲なのでしょうか…」

 ん?範囲?

「犯人特定して報復なのですよね?」

[そう書いていたよ]

「では、その特定が組織なのか、国なのか…」

[血の気が引いた]

 殺すつもりはなかったとか、ちょっと拉致って話を聞きたかったとか、そんなレベルの話は女神様方には関係ない。

 敵対してきたから報復攻撃。これに尽きる。

 僕は慌ててメッセージを送る。

【犯人って、どなたでしたか?】

 即返信が帰ってきた。

【騒ぎのあった国二カ国合同だったからみんなの肺にお花をプレゼントしたよ!二日で消えるけど、全員に警告メッセージも送ったから安心して!】

 安心できない!

 再び頽れる。

「姫様!?女神様は何と…」

[……騒ぎのあった国二カ国合同だったからみんなの肺にお花をプレゼントしたって…二日で消えるけど、全員に警告メッセージを送ったと…]

「……これが、実行犯全員なのか、実行犯含め国民全員なのかですね」

 突然、エレベーターが下へと降りていく。

 相変わらず上はゴンゴン煩いけど、恐らく呼吸もかなりし辛い状況なんだと思う。

 ドアが開き、武装した人達がすんなりとエレベーター内に入ってきた。

「上だ。犯人は戦意を喪失している」

 巽さんの言葉に武装した人達は頷き、天井救出口を打ち破って上へと上がっていった。僕らはエレベーターから離れ、邪魔にならないようにエントランスで大人しく待つ。

「状況報告せよ」

「二名確保。屋上に三名倒れております」

「姫様の階は」

「現在確認中…入る事ができないとの事です」

「被害者は」

「上階警備室にて二名手足を縛られて昏倒しているのを確認」

「救急搬送は」

「現在手配中です」

「ご苦労」

「はっ!」

 ───何か、巽さんが格好いい…

「姫様、もう暫くお待ちください」

 エレベーターが動き出し、縛り上げられた覆面姿の三名が武装した人に引き摺られてきた。

 僕を見て途切れ途切れに何か言っているけど、聞こえない。

 ただ、巽さんは理解したようでその人に何か言うと何か驚嘆したように声を上げて泣き崩れた。

[いや、何なの一体]

「何故神は我々にこのような事をするのかと寝ぼけた事言うので、神の愛し子に貴方方は何度危害を加えれば気が済む?と聞いたら神よ違うのです!と叫び始めただけです」

[僕危害受けた覚えないんですが!?しかも何度って!?]

「なにも姫様の事だけじゃないですよ?」

[そこで綺麗な笑みを浮かべられても…]

「報告!一部階層を除き各階層問題なし!」

「ご苦労!通常任務に戻れ」

「はっ!」

[ありがとうございました]

 僕がお礼を言うと見事な敬礼を見せて走り去っていった。

「さあ、姫様。参りましょうか」

[……姫違うし…]

 小さく呻きながらも巽さんの手を取ってエレベーターに乗った。


 僕の階に着き、巽さんが念のためと先に降りて確認をする。

「問題無さそうですが、念のため姫様の部屋も確認させて───」

【この階自体結界で包んでいたから大丈夫だよ!】

 頼もしいゆる姉様のお言葉が巽さんの動きを止めた。

「───では、私はこれで」

[うん。今日もありがとうございました]

「何かありましたら連絡の方、よろしくお願い致します」

 そう言って巽さんはエレベーターに乗り込んだ。

 さて───ボックスの中で暴れている方々を何とかするためにも早く神域に行きますか!

 僕は気合いを入れて神域の扉を開けた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る