68話 TS化した僕は定時退社する!

 鑑定大会を終え、書類整理をしていたら定時となったので巽さんと共に協会を出る。

 怪我人が多く運ばれてきたのに僕は出なくて良いと言われたのが不思議だったけど、「お前さん狙いの連中なんだよ…」と同じ回復班の人に言われたので僕はお仕事が半分も出来ない。

「安心しろよ。そういったあからさまな奴は一度酷い目に遭って貰うからな!」

 とイイエガオで言っていたので多分大丈夫。

 と言うわけで僕らは帰宅中なのですが。

「………あの、姫様」

[姫違うし、とうとう様つけてどうかしました?]

「…あの、その虚空から出てきている手は一体…」

[気にしないでください。リーリー?]

 手がビクッと反応して消えた。

「…問題がないのでしたら…」

 巽さんは複雑な顔で運転をしている。

 途中、スーパーに寄ってちょっと買い足しをし、帰り際酒屋さんの側を車で通ると…お客さんが結構いた。

 えー?

「稀少なお酒を定価で取り扱っていると評判になっていますので」

[そんなすぐに人気になるの?]

「昨今のネット情報とその反応は凄いですから…」

[ネット怖いなぁ…]

「姫様の情報も結構上がっていますよ?昨日の一件で加速していますね」

[うん。僕その類は絶対に見ない!]

「その方が良いかと…姫様を下卑た目で見る不埒な輩は…」

[まあ、うん。この体って、凄いメリハリボディだし…複雑な心境だぁ…]

「百合板は私が監視していると宣言しておりますので、正常です」

 正常の定義って一体…


 マンション周辺には相変わらず人が多い。

 ただ昨日と少し違う点が、外国人が数名居る事だ。

 欧州系と東洋系と中近東系。見事に別れている。

「あー…来てますね」

[やっぱりあの人達って?]

「駐在官かと思われます。確実に武官ですね」

[あの、一人ナンパ始めたのですが…]

「わざとですよ。こちらの視線に気付いたようなので」

[ナンパ野郎絶許]

 視線を切り、コンシェルジュさんに挨拶をしてエレベーターに乗り込む。

「…何かあったのですか?」

[兄さんの友達だった人がね…ちょっと]

「姫様も被害が!?」

[いやぁ…僕男だよ?一度いやらしい目で見られたけど、一緒に居た兄さんの友達さん達から絶対零度の視線浴びていたし]

「名前を」

[いや、その人痴情のもつれで…]

「始末されましたか?」

[あらゆる意味で再起不能だから…]

「あらゆる意味…」

[まあ、そんな事よりも───ん?]

 エレベーターの上からちょっと変な音がする。

 巽さんも既に反応し、銃を取り出して…銃!?

「姫様。失礼します」

 そう言ってエレベーターの強制停止ボタンを押し、階数表示のパネルの所で何か弄っている。

「映像が出ます」

 右上のエレベーター内防犯カメラのモニターが切り替わり、このエレベーターの上と思しき映像が映し出された。

[うわぁ…]

「うわぁ…」

 僕と巽さんは引きつった顔でモニターを見る。

 武装した覆面姿の人が二人、気を失った状態で虚空をバウンドし続けていた。

[これ、僕のスキルだよね…]

「そうだと思いますが…これは流石に…」

 うん。映像的にホラー過ぎる。

 巽さんはスマートフォンを取り出すも予想通りなのか通話できない状態になっていた。

 まあ、メッセージがあるから問題無いけどね!

「連絡は入れておりますのですぐに救援が来るかと思います」

[もしかしたら、外の人達の誰かが合図したのかな?]

「可能性はありますね…それと…」

 ?

「一階と最上階にはそれぞれ警備室があるのですが…」

[もしかして…]

「はい。可能性はあります」

【犯人特定できたから報復しておくね! 頼れる姉より】

 ゆる姉様ァァァァッ!

 ガクンと膝から崩れ落ち、頽れた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る