【800万PV感謝】ダンジョンのある現代でTS化した僕は全力で癒やし要員となる

155話 覗見～ここを覗くならば、僕もまた等しく見返すのだ！

【せお：話は聞かせてもらった！今こそ新たな姿を見せる時！】

　えっ？凄く嫌なんですけど…

【せお：悪役令嬢変身キットだよ！？】

　キット？

【せお：そう！変身道具一式入った化粧箱！】

　でも悪役令嬢なんですよね？

【せお：うん。絶対君ではなれないタイプ？】

　何故疑問系なんだろう…

【せお：コメ欄見たら面白いこと書いてたから斜め下の方向を目指した！】

　コメ欄？

【せお：うん！】

　よく分からないですけど、斜め下というのは悪い方向では？

【せお：多分ガッカリだよ！】

　そっかぁ…この悪役令嬢片キットって何か効果あるんですか？

【せお：メリットデメリット逆転効果があるから言霊効果が下がって運動能力に転換される。あと、ですわ言葉になる】

　なん…だと？

【せお：あれ？どしたの？】

　いますぐなる！悪役お嬢様になる！

【せお：なんか乗り気になった！？（ボックスに荷物が届いています）】

　素早くプライベートボックスから化粧箱を取り出す。

［課長！お願いがあります！］

「えっ！？急にどうした…あと、それは？」

［化粧の仕方を教えてください！］

　ガタガタガタガタンッッ！

　自ブースと隣のブースからもの凄い音がした…と思ったら全員が勢いよく立ったせいで椅子が倒れた音だった。

「突然どうしたの！？女の子として一生過ごす気なの！？」

「ようこそキマシタワー建設部へ！」

「いやいやいやいや！何か深い事情があるに違いないぞ！？例えばデートに行きたいとか」

［いや、なんでみんな急に騒ぎ出したの？仕事しようよ…］

『まさかのハシゴ外し！？』

　全員が一言一句違わず同時にそう叫んだ。

　会議室を使い、特務課の皆が見守る中、化粧箱を開いた。

　ボフン、という音と共に煙が吹き出して僕を包む。

「岩崎！？」

「けほっ、っふ…私は無事ですわ…」

　軽く咳き込みながら私は課長さんにそう答える。

「いっ、いわ、さき？」

「はい？」

　煙が晴れる。

「いかがなされました？」

『………』

　全員が私を見て絶句している。

「どこかおかしなところでも？」

『悪役ヒロインじゃなくてツンデレヒロインだーーーーーーーっ！！』

「なっ！？なんですの！？」

「チョロくても良い…岩崎の優しさが悪役令嬢を浄化させた結果だ…」

　課長さんが鼻血を流しながらイイエガオで私に声を掛けてきたのですが…

「課長さん。いけませんわ！」

　私は慌ててハンカチを取り出して課長さんの鼻血を軽く拭い、課長さんの右手を取ると自身の鼻の付け根にもっていく。

「付け根部分を少し強く摘まんで数分待っていれば止まるそうですわ」

「あっ、ああ…済まない」

「恐らく過労からきたのかも知れませんわね。体調管理も管理職の仕事ですわよ？…と言っても課長さんの負担が普段から多い結果ですからあまり言えたことではありませんが…」

「ツン10％デレ90％超加糖の勘違いされる悪役令嬢だ…」

「悪役に勘違いされる超善人令嬢だコレ…」

「あああああああ尊い！尊い良いいいっ！」

「キマシ撓症候群だ！コイツを隔離しろ！」

「───金髪縦ロールつり目なのに善人オーラ全開の悪役令嬢って…」

「あの…戻りましたが、姫様と課長は…」

　ああ、巽が戻ってきたようですね。

「巽。会議室まで来なさい」

「はっ！姫様！お呼びで……」

　何故か巽が固まってしまいましたわ…