154話 暴動~戦いの基本は戦いの前から始まっているッス

 巽さんが結構な速度で書類をめくっている。

「───確かに。贈収賄の証拠と脅すための内容が記されていますね…しかしこれだけでは尻尾切りで終わります」

[えっ?内容まで確り熟知してる!?]

「はい」

「……巽は本当に管理職向けだよなぁ…」

「私はあくまでも実働部隊です」

[巽さんや課長が上司…最高だと思うけどなぁ…]

「「………褒め殺しが過ぎる…」」

 なんで!?

「では、この資料はどうッスか?」

 タイムさんが更に資料を出してきた。

「───?………日本の議員18名。金銭受け取り日時、名目…これは良いですね。メディアに流したら即反応してくれます。日時をしっかり付けておけば…」

[タイムさん。もしかして資料を全部コピーしたの?]

「そうッスよ?資金の流れとかも帳簿上、データ上全てコピーしたッス」

 タイムさんが有能すぎる!

「あちらが師匠に喧嘩を売ってきたわけッスから、情報収集は必須ッスから!」

「今日は午後、動画配信予定は?」

[予定していませんでしたが、朝話をした力を籠めた歌とかもあるのですけど、一つ問題が…]

「何だ?」

[僕、そんなに歌知らないんですよ…流石に版権問題がありそうなので勝手に歌ったら駄目でしょうし…]

「あー…確かにあとで揉めそうだな。特に動画配信等では」

「お任せください」

[巽さん?]

「1時間ほどお時間をいただけますか?」

[?はい。僕はこのまま午後もお仕事していれば良いですし…]

「このリークと版権問題含めて少し話をしてきますので、配信は18時という事で…」

[毎日配信するとも時間も決めていないから良いと思うけど…]

「では…課長、緊急で中務省へ向かいますので」

「ああ。その間私が岩崎を抱きしめて「お願いしますね?」分かった分かった」

 僕の分のトレーを持って巽さんは少し早足で去っていった。

「あ、今渡した資料もあの大使さんに渡してきたッスよ」

 巽さんが去ったあとでタイムさんが姿を見せた。

[向こうの人に警戒されなかった?]

「?まったく警戒されなかったッスね…師匠の使い魔ッス!と言って資料渡してすぐに転移したからッスかね…」

 えええええっ?

「それは…大丈夫なのか?」

「多分ッスけど、あのロザリオが手元にあるのに普通に跳んできたからかも知れないッス」

「…確かに。アレだけの代物を前に平然と姿を見せることが出来ないどころか弾かれるな。…少し連絡しておこう」

[済みませんがお願いします]


 自ブースに戻り、書類作成を黙々とこなしていると…

「岩崎…これを見てみろ」

[えっ?何かありましたか?]

 僕は課長の席に行き、表示されている画面を見る。

 ぅえっ!?

 みこチャンネルに歌って欲しい歌募集(ただし要望として本人にあげるだけとなります)…なんてあるんですが?

「まさか、これが版権問題対策…なんて事はないだろうな?」

[いやさすがにないと思いますよ?]

「───まあ、そろそろ戻ってくるだろう。その時に聞けばいい」

[外、どうなっているんでしょうか…]

「外?あー…さっき買い物に出たらまだ結構人がいましたよ」

 医療班の中に外に出た職員が僕らにそう声を掛けてきた。

[もしかして、僕は外に出られない?]

「いや、モードチェンジで配信で見せていないモードで出れば良いだろ?」

 その手があった!


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