153話 愚鈍~優秀な猟犬は主を守るものッスよ?
「───はい。はいっ!では被害の多い熊本に直接向かいます!」
どうやら軍人?さん達は直接危険地帯に赴くようだ。
「姫様。そこでサラッと祈念珠を渡そうとしてませんか?」
[いやぁ…必要でしょ?]
[まあ、そうかも知れませんが…」
[あの、熊本に行くんですか?]
「あっ、はい!あちらが現在最も被害が甚大でして…」
[あ、ではこれを持っていってください]
「っ!!?」
ドシャッと勢いよく軍人?二人が膝をついた。
「姫様学習して…お願いですから…」
巽さん、ご免なさい…
祈念珠を軍人?さんに手渡し、とっとと行ってもらう。
「岩崎…」
[あ、課長の分もどうぞ]
「ご近所さんにお裾分けする感覚で渡すものでは無いぞ!?」
課長は普通に受け取ってくれた。
午前中のお仕事を終えて食堂へと向かう途中、巽さん宛の電話アナウンスがあった。
「姫様との食事…」
「呼び出しは仕方ない。速やかに行ってくれ」
ニヤリと笑う課長に巽さんは肩を落として来た道を戻っていった。
「しかし岩崎。お前さん数珠?ロザリオ?は配って回るつもりか?」
[必要とあれば配りますが…巽さんにも言われましたが、各国3~5本の制限で渡す必要があるかなぁ、と]
「それも必要と手を上げた場合のみにしろよ?それと圧力が来た場合、全部を消滅させるように神様と話を付けておいた方が良い」
[連帯責任ですか?それだとかなりの被害が…]
「出るだろうな。ただ、毅然とした態度を取らない時もあるという覚悟も必要だという事だ。実際にやる必要はない」
食堂に着き、課長と僕は日替わり定食を注文する。
[デーモンハンターさんはどうしたんですか?]
「ああ、あちらに置いてきたぞ?」
えっ?
「あちらの女性探索者に手を出した時があったらしくてな…その女性に捕まって連れて行かれていったよ」
[あー…まあ、運命の再会だったわけですね]
「運命が潰える再会だったかも知れないなぁ…」
少し遠い目の課長に首をかしげながらやってきた日替わり定食を持ってテーブルへと向かった。
あ、今日の日替わり定食はサイコロステーキでした!
「師匠、速報ッス」
食事を終えたタイミングでタイムさんがソッと資料を手渡してきた、
うにゅ?
手渡された資料を受け取り、パラパラとめくる。
───日本語と英語は読めるけど、うん。これは読めない。
「どうした?」
同じく食事を終えた課長が資料に目をやる。
「……うん。未履修」
[未履修って…]
「巽は分かるんじゃないか?」
「少々お待ちください。食事中なので…」
[急かしているわけじゃないですから普通に食べてくださいよ!?]
パクパクとペースを上げる巽さんを宥めながらタイムさんにこれが何か聞くこと、
「師匠を狙っている宗教団体?って組織の裏帳簿ってやつッス!これをコピーして昨日来ていたカナダ?とスペイン?の人達にも渡してきたッス!」
[いや何故?]
「敵情視察をしてたら隠し資料が沢山あったんスよ。で、どうしようかなーと思ったら指示が飛んできたんでそうしたッス!」
「これは、荒れる…!」
[僕としてはタイムさんがどれだけの言語を知っているのかの方が気になる!]
「パッと分かるのは9言語ッスかねぇ…」
タイムさんパネェ!
「…食べ終わりましたが、あの、資料を」
あ、巽さんご免なさい。
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