588話 報告書と、接待巡回


 お三方にはやることが沢山あるでしょうからとドレッシングついでに神域の野菜や穀物をドッサリ持っていってもらった。

 ………アペプ(幼女)の反応からして、また来そうな予感がするぞぅ?

 僕の和菓子も食べちゃったし…和菓子の確保はしておこう。


 と言うわけで協会へ戻って参りました。

「そのまま直帰でも良かったんだぞ?」

「いえ、あまりにもとんでもない事を沢山聞いたので覚えているうちに報告書を仕上げたいなと」

 あ、課長が情けない顔をした。

「胃が痛くなる類か?」

「僕もちょっと痛くなりましたけど、それは聞かなかったことにしているので一応大丈夫だと思います」

 フリー素材の世界地図にアペプの移動経路とダンジョンの位置、モンスター等の情報を書き込む。

 ───何であの子地図は見ることできたのに迷子になったんだろう…記憶力の良い迷子って事かな?だとしたら次回からは迷わないと思うけど。

 そんな事を思いながら打ち込むこと一時間ほどでA4用紙5枚程度の報告書が出来上がった。

「課長、確認お願いします」

 まずはデータではなく紙で提出する。

「───ああ。確認させてもらう」

 課長は覚悟を決めた顔で報告書を受け取り、即撃沈した。

「岩崎……これ、国際問題や国家防衛問題レベル…」

「でしょうねー」とは流石に言えなかった。

「しかし提出しないわけにはいかないので…」

「そうだよな…うん。ありがとう」

 課長は力なく2枚目、3枚目と読んでいく。

「…これ、マジックバッグや収納バッグによる航空輸送に早い段階から切り替えて正解だった理由付けに使われそうだな…」

「あー…まあ、外国はそこら辺教えてくれなくなりましたからねぇ…」

 下手をすると国がなくなったことを数年後に周辺国が公表する…なんてレベルの危険状態だから。

「しかし海の妖怪か…あまり上陸している話は聞かないが」

「神様方か、妖怪の縄張り問題で昔以上に棲み分けがされているんでしょうか」

「そこら辺の情報は流石に得られないか…」

「兄さんが居たら情報を集められたと思いますが、僕は…猫さんや玉藻さんからくらいしか情報源はないので」

 あの方達はそんなに情報は持っていない。

 何せ片やダンジョンを避難所にしていた者、片や自ら封じられていた者だから。

「昔の縄張り関連の聞き取りでも良ければ…」

「妖怪と親交というパワーワードが今は普通になりつつあるんだよなぁ…主に岩崎家のおかげで」

「京都辺り行けば聞けませんかね」

 知り合いに妖怪の方はいませんか?って聞いたら2~3人くらいは手を挙げてくれそうだけど。

「とりあえず、一通り読んだ。これは部長経由で各省庁に回ることになるだろうな」

 拙い報告書が各省庁に回る…

「まあ、岩崎の報告書やレポートは半数以上が上に回っているが」

「聞きたくなかった!」

 何という罰ゲーム!

「そう言えば、巽さんはどちらに?」

「妹さん達を接待しているぞ」

「えっ?」

「彼の聖女と巫女の妹、しかもほぼ無償奉仕させてしまったわけだからな。接待くらいさせるさ」

「なんか、済みません…」

 なんだかもの凄く申し訳ない。

「いや、表向きは巡回だぞ?ただその範囲は定めていないし、問題解決と接待両方の意味があるとも伝えはした」

 あっ、課長は飲食費とうとう全て一度経費で落ちるか考えてる…

「鬼を倒しておいて無償労働はなぁ?」

 ニヤリと笑ってそう言う課長はやっぱり頼れる上司です。


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