373話 食事と騒ぎと

 午前中の仕事は特に問題無く終了。

 カウンターで「巫女を出せ」と騒いだ人が1人いたみたいだけど、それだけ。

 緊急搬送される人も居らず、タイムさんが戯れに特別強行班と医療強行班の人達を連れて組み手をしに行ってしまったりするくらいまったりとした午前中だった。

 食堂で食事をして戻ってくると───あら不思議。

「巫女がここに居るのは分かっているんだ!出せ!」

「警備を負傷させてまで押し入ってくるとは!その男を捕まえろ!」

 カウンター側で結構な騒動が起きておりますわよ?わよ?

「っ!姫様!念のため───」

 巽さんが駆け寄って来るのを横目に悪役令嬢変身キットをとりだす。

「えっ?」

 そして変身!

 煙が僕を包み、悪役令嬢となった。

「騒々しい。一体何が起きているのです?」

「はっ!現在探索者が姫様を出せと暴れ、制止する警備員を昏倒させ内部に侵入しようと暴れている所を医療強行班で取り押さえている所です!」

 警備の人って、かなり強かったような?

「巽。これが陽動の可能性は?」

「職員通用口及び業者用搬入口は登録者以外は侵入できませんが…非常口に人を回します!」

 巽はそう言って何人かに声を掛け、走って行った。

「そしてここはガラガラ、と」

「まあ、私が居るが」

 何事もないようにデスクワークをしていた課長さんが顔を上げる。

「課長さんがいてくださるので安心ですわね」

「岩崎は神域に逃げ込まないのか?」

「必要性を感じませんわ」

 うん。むしろ私のスキル上、ここの方が安全ですし、課長さんもいますし。

「しかし、おかしいですわね…相手は警備すら昏倒させる強者ですのに…」

「うん?強行2班は私が月一で指導しているからそこそこ強いぞ?」

「あっ…(察し)」

 課長さんのそこそこはどのレベルなのか…

 と、ドンッという音がした。

「……おいおい。爆弾まで使ったのか…相手さん」

「なんですって!?」

 自爆テロという事ですか!?

「職員は無事だろう。強行班はそういった事に対しても対処できるよう訓練済みだ」

「いやそれって対テロ部隊でもやらないのでは?」

 それ以前に出来ない…と思いますが。

「しかし、殺意が高いな…探索者であれば事業部の方で照合をしているだろうが」

「私、何かやらかしましたか?」

 流石に殺意が高いと不安にもなりますけど…まあ、逆恨み含め色々あるとは思う。

「良いやらかしは数あれど…だな」

 課長はそう言いながら引き出しからペンを取り出し、私の二つ隣の席目掛けて投擲した。

 キンッ

 ペンが何かを弾くような音と共に弾け飛び、

「残念ッスねぇ…全身に巻いてある爆弾は解除済みッスよ」

 タイムがそう言ってソレを取り押さえる。

「───本当に殺意が高いな。岩崎、コイツを常に回復させ続けておけよ?自決したりするからな」

「現在進行形でやっておりますわ」

 取り押さえられた状態でもうっすらとしか見えないソレに対して慈母の癒しをかけ続けている。

「さてご開帳ッス!」

 タイムが何かを剥ぎ取り…姿を見せたのは10代半ばくらいの少女だった。


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