980話 護衛士官奮戦ス


「っあ!?」

 ドンッと勢いよく尻餅をついてしまった。

 慌てて周りを見ると周囲を警戒し続けているダニエルさんとミシェルさん。

 香也と見知らぬ青年も無事のようだ。

 護衛士官さん以外はどうやら全員脱出できたようだと安堵のため息を吐いた。

 やっぱり私には荒事は向いていない。

 心からそう思った。



 SIDE:護衛士官


「っく!」

 シールドを展開し、同時に周辺の敵に対し掃射する。

 聖属性の弾丸が敵を砕き、または弾き飛ばしていく。

 

 ───ここはおかしい。資料にあった境界ダンジョンとはまったく違う。

 そして何よりもおかしいのは、事だった。

 入口は空間にポッカリ空いているだけ。

 眼前に広がるのは灰色と紫色の靄。そして無数の骸骨達。

 人だけではなく動物、妖怪と思しきものの骨まであった。

 それらはこちらへ向かってひたすら襲いかかる。

 更に不気味なのは聖属性で倒してもどうやら倒し切れていない事だっだ。


 さてどうしたものかと牽制をしながら考える。

 どうしたら

 倒してもモンスターをひたすら掃射、そしてシールドを展開しながら考える。

 とりあえずと一掃しようと聖属性付与の閃光弾を放ち、周辺一帯が光に包まれた瞬間だった。

 その空間全体が揺れ動いた。

「───成る程。そういう事ですか」

 ニヤリと笑い、小箱を開ける。

 その小箱の中には聖水晶が1つ、入っていた。

「流石に神聖水晶を入れるのは自重したのですね」

 思わず苦笑しながら箱から取り出し、その水晶を握り砕いた。

「神炎よ、この世界を焼き払え!」

 水晶から出た神気が炎となり床を、壁を、天井を焼きながら進んでいく。

 何度も復活を繰り返していた骸骨達は身を焼かれて次々と消滅していった。

 同時に世界が悲鳴をあげガタガタと揺れ始める。

 恐らくこの世界は”胃界”であるという予測を立てていた。

 要は何者かの胃の中。

 大妖か妖怪仙人か…まあ何者かがダンジョンを模したのだろう。

 それ以前は別の方法で捕らえ、消化していたのだろうが…

「先が、見えた」

 炎がおよそ1キロ先の行き止まりまで到達し、全てを焼き尽くす。

 炎は消えず部屋全体を照らしている。

 そこは一辺が1キロ程度の広い空間だった。

 天井も高く恐らくは2~30メートルは優に超えているだろう。

 空間は絶えず悲鳴をあげ、揺れ動いているがそんな事は関係ないとばかりに武器を取り出す。

 歩兵携行式多目的ミサイル…ジャベリンだった。

 ゲート手前まで撤退し、周辺にシールドを展開。

 ダイレクトアタックモードで目標の壁をロックオンし、そして───

「Fire」

 その一言と共に発射した。

 弾頭は軽く上昇した後浅い角度で下降をしていき、およそ1キロ離れた壁を穿ち爆発を起こす。

 特性弾頭は聖属性と火属性。つまり神炎に近いダメージを与えられる代物であり、何よりも貫通力が高かった。

 耳を劈くような悲鳴がし、空間全体が波打つように動く。

 これ以上いるのは不可能と判断し、最後の土産とばかりに大量の特性手榴弾を次々と投擲し、ゲートを潜った。


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