798話 日本酒好きと日本紀って似ているけど違う。
皆さんの貴い犠牲でそれぞれの推し酒が決まり、依頼をかけた。
さて、残念ですがあの水を使うので一般の人間である方々は本当の完成品を飲めないんですよ。残念だなぁ…
そんな話をすると数名が膝から崩れ落ちた。
ガッツポーズしている神様方。
ただ、貴方がたも何故無条件で飲めると思っているんですかねぇ?
箱庭に戻り酒蔵の中に入る。
…うん。ミードとシードルが増えてる。
転送されるよう設定していたけど…コレは結構多いな!
うっかり解放したら大惨事間違いないからもう少し置いておくとして…今回の日本酒試作の容器を取り出す。
容器の中に日本酒はまだまだ大量に入っている。コレをベースにここでお酒造ってみるのもありかなぁ…
そんな事を考えながら会社別に別けて置いて一息吐く。
まあ、作るとしても今回頼んだものが完成してからだよなぁ…
購入した4斗樽の日本酒も置く。
あの後皆が欲しがったので樽酒を出そうかと思ったけど、買っておいた1升瓶を数本差し出してあとはどうぞご自由にと逃げたわけだけど。
しかし…
「天之御中主様が限界手前まで疲弊しているという事態、どう対処したものか…」
その前にせお姉様が気付いていない可能性もある?
───蔵の中でウンウン唸っても仕方ないか。
蔵の中を見回し、特に問題が無いことを確信して蔵を出た。
「えっ!?天之御中主様が限界手前だった…ですか!?」
石長比売様は知らなかったようだ。
「無限の力をお持ちではなかったのか…」
そんな恐ろしい神様、多分上位世界辺りにしか存在してないだろうけど…
「しかし、天之御中主様が倒れてしまった場合、他の神々が身動き取れなくなってしまいますのでその辺りは…」
「身動きが取れない?」
「はい。身内に敵が未だ潜んでいる可能性があるからということでしょうが…御自らが前線に経つ必要は無いはずです」
言われてああ、と何となく察した。
ずっとあと一歩で手遅れという状態だったんだと。
「日本という国の神々のシステムってずっと戦国乱世なんですよね」
「えっ?」
「強いモノが神として威勢をふるえる。例え精霊種であろうとも人々はそれを神と崇め奉り正式ではなくても見做し神として居座ることができる」
「それは…」
実際記紀を見ても扱いがあやふやであったり辻褄が合わない点もある。
そして渡来神が勢力を振るうのも多い。
恵比寿神問題もその中の一つだけど、まあそれは置いておこう。
そんな中にあっても天之御中主様はただひたすら世界の維持のために戦い続けてきていた。
粛正をし、次代を育て、自身はほぼ信仰を受け取らず在る事に特化した神。
「有史以前からひたすら戦ってみせることによって神々から畏敬の念を集めていたんだろうね」
僕はグラスを取り出しテーブルの上に置く。
「確かに、我々はあの御方が高みに座している姿を見たことは───」
グラスに神聖結晶を一つ入れ、泉の水をグラスの半ばまで注ぎ入れる。
「これまでの活動に対し心からの感謝と敬意を」
グラスが淡い光を発し中に入っていた神聖結晶が溶けていく。
そして全て溶け終わった後に水が少しずつ減っていった。
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