797話 続・日本酒(まだ試作品)
「…本当に、君達のような子が現れてくれた事を誇りに思うよ」
お水を受け取り勢いよくキャップを開けるとその水を飲む。
あの、白城さん?
どうして「こやつ、本当に飲みおった!」って顔しているんですかねぇ?
えっ?今渡した水ですか?
自宅の水でも湖の水でもなく泉の水ですが何か?
「っかァァァッッ!酒漬けだった身体には劇薬だ!」
楽しそうにそう言いながら天之御中主様は水を全て飲み干した。
例え数%でも回復できたのであれば嬉しい。
「本当に、君が巫女様と神々にすら言われる理由が分かった気がするよ」
缶とペットボトルを分解、消滅させた天之御中主様はそう言いながら姿を変える。
それはいつもの姿ではなく、中性より僅かに女性寄りの姿だった。
スーツ姿で腰まで届く濡羽色の艶やかな髪をした天之御中主様は自身の状態を確かめるよう何度か頷く。
「うん。7〜8%といったところかな。ただ、1000年前よりはずっと良い。ここ百数十年はほぼゼロ状態だったからなぁ…」
いや、そこまで追い詰められているのに元気だった貴方様にビックリなんですが?
関心以上に呆れながらマンションへと入る。
そして一緒に食堂に入り───
「んっ?珍しい。食堂に来るなんて」
「ええ。ちょうどお酒大好きな神様方にテイスティングをして貰おうと思いまして」
そう言った瞬間に食堂内の至るどころでガタガタンッと凄い音が出た。
「新しいお酒と言うことかな?」
天之御中主様が冷静───いや違う。目が泳いでる。
「そうです。酒蔵さんに依頼していた日本酒の試験醸造品が届いたので…それらの中でどれが一番良いのかを「「「試作品が出来たと聞いて!」」」……決めてもらおうと思いまして」
ゆる姉様、ミツルギ姉様、せお姉様が乱入してきたけどスルーしておく。
「あっ、澤辺さん、ひしゃくとグラスをくださいな」
僕をガン見していた澤辺さんにお願いすると、
「ただ今!」
すぐに厨房に走っていき、十秒と経たずに柄杓と試飲用のグラスを持ってきた。
ゴメンね、アイドルをこき使ってゴメンねぇ!
「ありがとう澤辺さん」
「巫女様のお役に立てて幸せです!」
あれ?なんか狂信者になって…?
とりあえずトレーを受け取りまずは一社目の容器を3つ取り出す。
『巫女、岩崎友紀様と確認。ロック解除します』
えっ?
プシュゥと言う音と共に蓋が開いた。
「私とみっちゃんの自信作!一つの容器に300リットルは入るし、常に3度で保存される。更に防犯機能や異物混入対策もバッチリさ!」
ゆる姉様…そのことを僕に何故言わないのかなぁ?
一つ目の容器に柄杓を差し入れ掬い上げる。
微かな果物の香りが漂う。
神様方と…偶然来ていたというかもはや毎日入り浸っている常連さん方がグラスを持って並んでいる。
「試飲用なのでおかわりはありませんからね」
そう断ってグラスに柄杓を傾ける。
途端に先程よりも強い果物…メロンの香りが漂ってきた。
「今時の日本酒といった香りですね」
そう言いながらも天之御中主様は凄く嬉しそうに席へと向かった。
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