396話 配信と突撃

 マンションに帰って参りました。

 なんか、配信をして元気づけて欲しいそうです。

 ───うん。意味分かんない。

 僕が「頑張れ!頑張れ!」って言っても、みんな頑張っているんだから余計なお世話だと思うんだけどなぁ…

 せお姉様方が配信しているスタジオに入る。

「あ!ちょうど良かった!」

「えっ?」

「今ちょうどみっちゃんが箱庭から祈念珠をしーちゃんに渡したから一緒に実況しよう?」

「しーちゃんイズ誰?」

「ゆーちゃんの所の司令さん!」

 あー…

「えっと、アレをわたしたら何かあるの?」

「うん!祈念珠を石板に入れたら緊急モードが発動してあの程度なら主導権奪い返せるよ!」

「でも、祈念珠の在庫は?」

「最近の侵攻で、結構使いました…」

「……僕、配信じゃ無くて祈念珠作らないといけないのでは?」

「駄目!ただでさえアレ作るのってゆーちゃんに負担掛かっているのに!」

 えっ?掛かってませんが?

「ゆーちゃんよぉぉく考えて!アレを作るプロセスを」

 ・ゆる姉様が現物を用意。

 ・神々に請い願う。

 ・神様チャージ!で完了。

「───じゃないの?」

「………間違ってないけど、真ん中の部分かなりすっ飛ばしてるよね!?」


『流石巫女様w』

『ご自身がバグキャラである事をご存じではないとw』

『そのバグなアイテムに世界は救われていたりするんだよなぁ』

『それをモノにしようと足を引っ張るお偉いさん方よ…うちの国とか』

『何処住み?』

『連邦住み』

『何という超特急感!』

『あ、自分合衆国住みです!』

『私達は巫女様に助けられたことに心から感謝しています』


「祝詞を唱えたり、供物を用意したり…」

「その供物含め、ゆーちゃんは色々支払っているの!」

「うん。そうですね…でも、寿命もそうですけど、それくらいの対価で大勢が救われるならって勝手にやっていることだから」

「私は無茶しないでって言ってるの!」

「あ、第一支援部隊が人を映してる!」

「えっ!?…稲荷神社?…ああ、宇迦之御魂様、大宜都比売様と楽しく農業しているから加護バッチリなんだろうなぁ…」

「良い具合に筋肉ついてきたって言ってた」

「女神様ェ…でもそのおかげで社が守られてる?」

「女神の筋肉で?それはちょっと…」

「いや、元気になったから相応の守りが出来るって…ああ!危ない!」

 神社から装甲車に向かって子どもが飛びだし、地面から餓鬼が手を伸ばしてその子の足を掴む。

 直後、聖光を照射されてその手は崩れ、子どもは泣きながら再び神社へと駆け戻っていった。

「人がいる。それだけでも急ぐ理由が出来たね」

「でも、鬼を止められるだけの力は眷属には無いと思うけどなぁ…」

「化かして隠しているんじゃ無いかなぁ…肉を人に見立てているとか」

 途中、先程より小さな稲荷神社にも数人の人が匿われているのを確認し、部隊は市役所前へと進む。

「ここは市役所前に審議の石板があるんですよね?」

「ほら、人が一杯居る」

「そして鬼達もガンガン叩いて脅していますね…」

「想像以上の数だね…突入でき…あ、突っ込んできた」

『重装救命官及び救命士、突入します』

 盾を構えた重装救命士達が救命士の左右を守るよう位置取りをしながら走り出す。

 鬼は4体。餓鬼と小鬼は無数におり、刀を持った死霊達もワラワラと集まる。

 そんな中、聖光器で行き先を照射し、邪魔をできるだけ排除しつつ、威嚇射撃で更なる援軍を寄せ付けぬよう牽制を行う。

 そして───

「到着した!祈念珠を……あっ!起動した!」

 審議の石板が光り、虚空に一柱の女神が顕現する。

 天秤を持つ神、ユースティティア。

 その女神が右手に持つ剣を掲げ、画面が乳白色に染まった。


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