307話 4day AM2~行く場所を聞いて…頭を痛める

 箱庭に入ると兄さんが白獅子達と戯れていた。

「来たか」

「兄さん!ごめんなさい!遅れました!」

「問題無い。行くか」

「その前に!行く先ってどんな所ですか?あと持っていった方が良いものとかは?」

 僕の台詞に兄さんは「あー…」と言って少し考え込む。

「今回行く所は3つの国と中央の中立地帯で構成されている世界だ。あり方がかなり歪でな…呪人族というダークエルフのような人間の国家と聖人族というエルフのような人間の国家。

 それと鉄人というアンドロイドと言うよりもロボットのような人間の国家があり、中央は木人という緑の髪と瞳を持つ人間の集落群と神柱という天を支える柱がある」

 ふむふむ分からん!

「文化レベルは?」

「呪人族は現代国家。聖人族は中世ファンタジーの教会勢力。鉄人は和風ファンタジーだ」

「なんて?」

「呪人族は現代国家。聖人族は中世ファンタジーの教会勢力。鉄人は和風ファンタジーだ。序でに言えば木人はここみたいな感じだな」

 なんか鉄人の世界観だけおかしくないですか!?───いや、人の世界のことにクレームを入れるのは駄目だ。反省。

「……ここみたいって、田舎って感じの集落が点在していると…兄さんのお仕事内容は?」

「木人の保護と各国家の調停だ。場合によっては木人以外の国に多大なダメージを与えても構わないそうだ」

 無茶苦茶攻撃的だ!?

「木人以外から毎日のように柱に向けて攻撃をするわ、木人を攫って奴隷にするわ…どれだけ面倒か」

「みんな何やってるの!?」

「聞いたら柱を壊せば捕らわれている神が姿を見せるそうだ」

「そうなの?」

「その捕らわれている神からの依頼なんだが…」

「駄目じゃん!」

 いやホント神様から神託下した方が良いんじゃないの!?

「木人は悪で神託はまやかしらしい。因みにその神は普通に別の世界への行き来が出来るぞ」

 ───この世界の悪化版?踊らされているとかでは無く都合の良いような解釈で好き勝手やっているんだろうなぁ…

 少し頭が痛くなってきた。

「で、僕がすべき事はあるの?」

「特にない。強いて言えば神と柱の先にある社でのんびりしていてくれ」

「了解。じゃあ手持ちのフルーツとか…小麦粉とお米も少し持っていこう」

「向こうでも料理をするのか?」

「うん。でも簡単な物だよ?あちらのご飯も食べてみたいし」

「………」

 え?何その反応…

 兄さんは意を決したように言葉を発する。

「あちらの食べ物は見た目に惑わされるな。最悪すぐに吐け」

「………持てるだけ食材持っていく!」

 兄さん絶対固形栄養剤で生活していたな!?

「食材は良いんだ…きちんと作れば旨いモノはたくさんある。ただ、鉄人や聖人族の味覚が壊滅的なんだ…」

 兄さんにそこまで言わせる料理ってなんだろう…

「逆に興味を示してしまうよ…」

「……饐えた香りの串焼きで、味はえぐみ満載。更には硬いゴムのような食感」

「それ嫌がらせに出されたんじゃ無いの!?」

「あとは粉の辛子と粉の山葵、一味唐辛子を醤油で混ぜて溶けきっていない状態ではんぺんに塗りたくって乾燥させたような代物を携帯食品と言ったり…」

「…食べたの?二つとも…」

「ああ。しかも串焼きは焦げていた」

 ───行きたくない。超行きたくない。

「だが、呪人族と木人の所はまともだ」

「僕柱の社から出ないこと前提で!」

「何かあったらここの扉を開いて逃げ込めば問題は無い。では、行くぞ」

 兄さんは柏手を打って両手を地面に着ける。

 と、目の前に大きな扉が現れた。

 ───兄さん、アレを読んだんだね…でもその扉があの扉だとしたらマズイでしょうが…

 僕はため息を吐いて先に扉を潜った兄さんの後を追った。


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