46話 TS化した僕は町を歩く(大惨事)②

「公務中だ。外交特権を使わせてもらう」

 そう言って巽さんは証明書を警察に提示した。

 いや、巽さんって協会の人間ですよね?

[えっ?超法規的措置で僕の護衛中は防衛駐在官扱い?]

「詳しい話は後程…こちらは行動予定の最中に違法な武力行為によって阻害された為排除しただけだ。疑義があるのなら問い合わせてもらっても構わない」

 巽さんが強気だ…

 ちょっと念のために課長に連絡しておくかな…あ、課長?今銀行にいるのですが、巽さんが強盗を倒しちゃって、なんか警察の方と押し問答をしているんですが…はい。巽さんは防衛駐在官の証明書を提示したのですが…はい。お願いします。

[───巽さん。課長がすぐに所轄の方に連絡入れるらしいからこれ以上揉めないで]

「姫…分かりました。課長はなんと?」

[えっと、分刻みスケジュール状態で証明書提示をしているのに足止めするとは良い度胸してるなって]

「外交特権行使を宣言していてもここから外に出さないようしている時点で拘束と何ら変わりませんからね。これは方々に喧嘩売っていると判断されてもおかしくないのですがね…」

 ジロリと警官達を睨む巽さん。

 一方有間さんはずっと幸せそうに僕の後ろをついて回っているのですが…

[えっ?楽しいの?]

「はい!お姉様と一緒にいられるのは楽しいです!」

 そっかぁ…

 あ、あちらの警官、電話口に怒鳴られてるぅ…なんか申し訳ないです。

 そして何故か怯えるように左右に分かれて道を譲ってくれる警察官の方々。

 アレ?この光景、兄さん関連で見た事あるぞぅ!?

「さあ、姫。行きましょう」

 僕は巽さんに手を引かれて銀行を後にした。



「あ、お姉様。私はこちらで失礼します。夜のアルバイト先に退職の旨伝えに行きますので…」

 そう言って有間さんは名残惜しそうな顔でお辞儀をして去っていった。

「さて、家電量販店には事前に連絡しておりますので少し急ぎましょう」

[そんなに時間ない?]

「問題ありませんが、トラブルが一度とは限りませんので」

 警護の観点からは間違いないと思うけど…フラグ建築は…


 特に問題無く家電量販店に着いた。

 入口で待っていたのは店長らしく、そのままバックヤードに通された。

「こちらがご依頼の品々です」

 そう言いながら店長さんは巽さんに納品書を渡す。

 ───店長さん、嫌らしい眼で巽さんの胸を見ないでください…

 巽さんは受領書を確認し、商品数点と現物を確認していく。

 僕はどうしようかなぁ…ああ、メイドモードにならないと駄目か。

 誰も見ていないし、えっと…ここか。よし、カメラの死角だからここでモードチェンジ!

 さてさて、購入完了したらどんどん格納していきますか。

「姫。こちらの品々で問題ありませんか?」

 大丈夫だと思います。

「ではこちらの納品請求書は中務省に回してください」

「………」

 アレ?どうして店長さんは呆けた顔して僕を見てるの?

「宜しいですね?」

 あ、巽さんの声が固くなったから慌てて書類を受け取った。

「では所有権は移しましたので…姫、よろしくお願いします」

[あ、了解しました]

 僕は一ラタンバスケットを商品に向けると、商品が全て消えて無くなった。

 そして

【オッケー届いたよ】

 せお姉様からメッセージが届いた。

 あと、店長さんが声を上げて腰を抜かしていた。

 そのせいで警備員がもの凄い形相で走ってきたよ…


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る