510話 先手、選別作業 後手、クレーム(封殺)
SIDE:日本
官邸前は約束の時間どころか正午になったばかりにもかかわらず、大勢の報道陣で賑わっていた。
同時に運び出される人間でも賑わっている有様だった。
「この10人グループは全滅!連れて行け!次!」
「だらしない。これくらいで腰抜かすなよ…次の選抜の邪魔だから出た出た!」
「はい次のグループはこちらのテントに入ってください!」
磯部大臣が怒声をあげ、特務部署「岩崎班」が忙しなく動き回る。
現在、選抜を無事通過した報道関係者は4名。
その内一名は明らかに報道関係者ではなく、修羅場をくぐり抜けた猛者の風格があったが、報道関係者で間違いないとそこの局長含め上の人間がそう断言したので誓文を用意し、違った場合や危害を及ぼそうとした場合は物理的に首が飛び、死後関係者は伊邪那美命に引き渡されるという誓文を提示する。
それに対しギャアギャア言ってきていたが「巫女様に其奴が危害を加えた場合、冗談ではなく日本がなくなるぞ?全世界と神々が敵になるからな」というと顔面蒼白で地下組織のエージェントである事を告げた。
───そのエージェントは岩崎班の隊員2名で完封出来た時点でお察しなのだが。
面白そうなので拘束したままマンションに連れて行くようにと磯部大臣に言われ、簀巻きにしてバスの後部座席に転がしてある。
尚、この事実は他社がお祭り騒ぎの如く生放送していたために隠すことすら出来ず全国に流れていた。
「いや、マジか…17名しか報道関係者選抜通過出来なかったんだが…」
「その内9名が制作会社アルバイトの探索者です」
愕然とした顔の磯部大臣に岩崎班の隊員が調査結果を告げる。
「ガバガバじゃねーか!」
「まもなく澤辺澪とマネージャーが到着するとのことです」
「社長はどうした?」
「体調不良とのことでした」
「連れてこい」
即答だった。
「現在強制連行中です」
そして隊員も慣れたもので指示をお仰ぐこと無く強制連行を行った旨報告する。
「こんな状況で人権だ何だ言ってられるか。権利云々の前に国民全員が死に絶えるかどうかの瀬戸際で馬鹿みたいに踊っている状態なんだよ」
「大臣。連中まだ騒いでますよ?」
「ああ!?あの状態で立っていられなかったのにか!?…無理言って借りてきて正解か…」
磯部大臣は頭をガシガシ掻きながら騒いでいる報道陣の元へと向かう。
「あんたら選抜に落ちたんだからとっとと解散しろ」
「今回の選抜は不当なものなのではないですか!?」
記者の一人がそう声を上げた。
「あ゛!?今なんて言った?不当だ?昨日言ったことを忘れたのか?」
ギロリと報道陣を見渡す。
「ここに居る人間は全員その考えという事で良いか?あの選抜で立っていられなかったのにそんなガキの理屈こね回している連中という事で良いのか?」
そう言われ数名の記者はムッときたような顔をするが、磯部は鼻で笑う。
「俺は言ったぞ?言動一つで機嫌を損ね死どころか死後もどうなるか分かったものじゃ無い、と。
さっきやった選抜は最低限1階エントランスより奥に入れるかどうかの選抜だ。あの程度でへばっているなら神と出会した時に色々粗相をしかねない。分かるか?選抜に使ったアレは強力な神気を発しているが、俺が持てる程度だ。しかも一つ…全員気合い入れろよ?」
言うや否や磯部大臣は祈念珠を2つ取りだした。
周辺にいた全員が声にならない悲鳴を上げ、ひれ伏す。
「…少しキツいが、これでもまだ神と出会した時よりはマシだ。こんな状態でもまだあんな寝ぼけたこと言うか?どうだ?答えてみろ!」
その身を以て体験したせいもあり、報道陣は誰一人として言葉を発することも出来ずただひれ伏していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます