832話 寝起きの緊急治療(ポーション掛けただけ)


 おはようございます。

 なんかもうとんでもなく危機的な状態になっているらしいのですが、僕は普通に元気です。

 僕が危機的では無く世界が危機的な状態…なんですよね。

 どうやらギリシャ神勢が頑張っている中、どこかの神が放った矢がゼウス神に当たる直前にヘラ神が身を挺して庇い負傷。現在こちらの医務室で療養中とのこと。

 この事によりゼウス神とアポローン神が動揺、他の神々も後ろから撃たれるのではと疑心暗鬼になりながらの戦闘になってしまい戦況は不利になっているそうです。

 で、僕は午前3時に緊急事態ということで優しく起こされました。


 部屋に入るとそこは瘴気と甘ったるい気が混じった何とも言えない空気に満たされていた。

 治療を施していた女性の神様もその瘴気にあてられてか顔が赤い。そして僕を見ると瞳を潤ませ情欲の光が見えたものの、「あれ?」と首をかしげ元に戻った。

「まずはこの場の空気を変えます!」

 僕は急ぎ聖光で室内の空気を浄化する。が、矢からは相変わらず…と言うか瘴気では無く甘ったるい気をさっきより吐き出していた。

「うーん?情欲や愛欲?でも矢の形状はギリシャ系じゃないし…済みませんが、周辺をちょこっとだけ切開して貰っても?」

「ぅ、あっ、はい!」

 やっぱりこれ、この怪しげな気にあてられているなぁ…

 女神様が手早く矢の刺さった患部を切開し、確認する。が、

「っ~~~!」

 ヘラ神ではなくその女性神が悶え始めた。

 僕は僕で血がね…でも仕方ない。

 素早くその矢を掴み、引き抜いて後ろへと放る。

 矢が形を変えて僕に巻き付こうとしたけれども、結界や障壁に弾かれて壁にぶち当たった。

「フィラさん!」

「はいはーい!三重隔離!」

 影からフィラさんが現れ、矢を隔離した。

「うわ、何この欲まみれ…色欲情欲愛欲ドロッドロの塊なんだけど」

 フィラさんがちょっと嫌そうな顔をする。

 いや、フィラさんどちらかというとそちら方面を扱う側だったよね?

「これ触って平気とかどうなってるの!?結界越しでもこんな濃密な淫気を放っているのに!?美女3名居るのに押し倒したいとかそういった気持ちは!?」

「ヘラ神は旦那さんが居るでしょ?そういったのは良くないと思うな。それにそちらの女神様も初めての方だし…フィラさんはこういったモノには耐性強いでしょ?

 それに僕が抱きついたら鼻血出して倒れるし」

「う゛っ…それは…うん。フィーバーし過ぎちゃうと言いますか…はい」

「それもフィラさんの個性だからねぇ」

 僕は小さく笑いながらテーブルの上にビーカーと薬師水瓶で生成されたポーション、そして庭の家の水を取り出して1:1の割合で混ぜた。

「まずは消毒として…」

 ヘラ神の元へと行き、矢の刺さっていた左の肩甲骨の辺りを見る。

「うわ、汚染されてるけど…信頼と実績のこの水を…」

 数滴垂らした瞬間だった。

 ヘラ神がビクンと大きく跳ね、その傷口から淫気が吹き出した。

「うん。予測済みです♪」

 聖光壁を創り出してヘラ神を押しつけるように固定。そしてそのまま残りを一気に流し込んだ。

 ポーションのみだった場合は体内を浄化出来なかっただろうし、流れ出た神気を回復させるのも起きて貰うまでは大変だと思ってやってみたけど、正解だったかな?

 ジュウジュウと音を立てながら出る濃密な淫気を手で追い払いながらおさまるのを待った。

 ───あの、お二方ともどうして僕をあり得ないって顔で見ているんですかね?


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