378話 大言と激震
巽さんは手紙を受け取るとプライベートボックスに入れ、速やかに先方にいるであろう天狗を知る関係者へとメッセージを送った。
添付して送り届けた後のスッキリした顔は……まあ、心からの安堵の別側面だと。
「しかし、此奴ら街道沿いを走るな…」
「これ、神眼誤魔化されているとか、無いですよね?」
思わず僕が呟くと、
【せお:僕とユグドラシル殿、ミツルギ殿の三域で見ているので逃がしようが無いよ。むしろこれで逃がしたら更に上位世界のナニカが犯行に協力しているから…そいつら終了のお知らせになるよ?】
いや、更に上位世界が出張ってきたら僕らが終わりなんじゃ無いの!?
巽さんのスマートフォンが再び着信を告げる。
「はい。巽で───いや、私に泣きつかれても…結論からお伝えください天狗達は神々に宣戦布告をしたと取っても構わないか、です」
そう言ってスピーカーモードにし、テーブルの上に置いた。
『天狗達はその程度で怯む我等では無い、これは一族の…えっ?な、ええ。それは……空が…黒雲が渦を…』
「ああ、おそらく伊邪那美命の八雷神がスタンバイしているだけだ。早く結論を言ってください」
『っ、はい。…って、いえ!宣戦布告したじゃ無いですか!私はこれ以上は…言いましたよね!?本当の神々の巫女だと!もう手遅れなんですよ!
恐らく刻んで肝を喰らうという言葉まで聞かれているのですよ!』
恐らく側にいる天狗に脅されて半泣きの職員さんなのだろう。
「えっ?僕は天狗さん達の隠れ蓑を悪い人達から奪取して返そうとしただけなのに刻まれて肝を喰らわれそうになっているんですね!?」
ちょっと大きな声で聞いてみる。
ザワッ…
あ、やばっ…ブースどころかフロア全体が殺気立った。
『今更戯れ言なんて言い逃れ出来ませんよ!?大天狗すら『然り』って笑っていましたよね!?その手紙を見て『確かに彼の神威を感じるが我等一族の総力を以て滅ぼすと』私に!誓文確認をした私に言いましたよね!?あの時点で叩いて良い軽口では無かったのですよ!?』
職員さんも必死だ。
「えっと、誰か職員さんを守れる方いませんか…このままだと殺されてしまいそうなんですが…」
そう呟いた矢先、
【
───突っ込みどころ満載だけど、うん。ルビも振ることが出来るようになったんだね…新機能やったぁ…
ギィンッ!ギィンッ!
スマートフォンの向こうから甲高い音が聞こえた。
そして分かった。ああ、天狗達が職員さんを斬ろうとしたんだな、と。
「…誓文を起動させて居る中の宣言であれば神々にも確と聞こえています。今回の件は祓戸様が取り成しをし伊邪那美命が確認の文を送っていたのですが、何の瑕疵も無い巫女を害するという宣言を受け、通常であれば下界に手を出さない神々が宣戦布告と受け取り…誅するとのことです。
汀さん、恐らくその場一帯は隔離されると思いますので早くでてください。貴方の周辺は空間操作で守られているので行く手を阻まれても無視して進んでください」
『はいっ!失礼します!』
通話が切れる。
「…これ、ならず者の言いがかりクラスなんだが…私や部長、岩崎達以外だと死んでないか?」
「…死んでますね。しかし、相手も伊邪那美様の手紙を読んであの反応とは…恐らく自分を大きく見せるための大言だったとは思いますが、馬鹿なことをしたものです」
課長が呆れ、巽さんが頭を振る。
なんだか混沌とした雰囲気になってしまった。
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