158話 帰途~お嬢様お家に帰るってよ

「衰弱状態ではあるものの、問題は無さそうです」

「そうか。強制的に追い出した場合は後遺症が残る可能性があったからよかった私の場合は強制が多いからな…」

 課長さんがため息を吐いておりましたが…

「その辺り、お兄様に聞いてみては如何ですか?」

「何故そこで君の兄さんが出る?」

「対霊用の透過攻撃を恐らく聖属性以外で応用出来る術を開発済みかと思いまして」

「いや、前回手合わせのあとに見せてもらった技は…」

「あれは刀術ですわ。お兄様は基本何でも使いますし、元聖者。憑きもの落としも得意技でしてよ?」

 ───あの技を憑きもの落としてして考えて良いのかは疑問ですが…

 と、心の中で付け加えたものの、当然課長さんには伝わらず「次会う機会があれば聞いてみよう」という前向きな回答が得られましたわ。

「では私はこれで…巽?」

「はっ!車を回して参ります!」

 巽が車を取りに駐車場へと向かい、私は少し手持ち無沙汰になってしまいました。

【ゆる:巫女様に歌って踊ってもらいたいプロジェクトが凄いことになっているんだけど…この世界と言うよりも、この国の人ってみんな芸能に秀でているの?】

 ───何やら不吉なメッセージが来たのですが?

「どうした?お嬢」

「…いえ。ゆるお姉様から少し不吉なメッセージが…」

「問題事か?」

「問題事では無いと思いますが…先程見た歌って踊ってみたいプロジェクトが凄いことになっていると」

「は?」

「恐らくは初めて見て短時間で10曲以上の歌や振り付けがあったので驚いた…と信じたいですわ」

「───お嬢。現実を見ろ」

 課長さんはそう言ってスマートフォンで確認後、私に見せてくれましたが…絶句しました。

「合計67曲…馬鹿なんですの?暇人なんですの!?」

「馬鹿で暇人で…それ以上にお嬢が魅力的なんだろうなぁ…何はさておき作りたいと思うレベルで」

 何やら遠い目をし、頷きながら言う課長さんは何故か寂しそうでしたわ。

「…あら?」

 まだ少し下にスクロール出来たので確認すると、何やら企画や新コンテンツがありますわね…

「どうした?」

「……ファンアート?献上企画?」

「んんんっ!?………中務省は何処に向かおうとしているんだ!?」

「あ、この教えて巫女様のデフォルメ巫女は可愛いですわね」

「…お嬢はそれで良いのか?」

「私ではないので」

「…そうか」

 少し微妙な顔をしていますが、センシティブな絵ではないですし、【巫女様】であって私ではありませんので此方が何か言うのは筋違いですわ。

 巽が車を私の前に停め、課長さんがわざとらしく後部座席を開け「どうぞお嬢様」と乗車を促してきたので…

「ありがとう藤岡お姉様」

 耳元でそう囁いて車に乗り込みましたわ!

 扉が閉まり、車は走り出し───

「姫様。課長に何と?」

「何故ですの?」

「いえ、課長があそこまで顔を真っ赤にして狼狽えるのは珍しかったので」

 えっ?何それ見たかったですわ!?

「恐らく今頃悶えているかと思います」

「巽!戻りなさい!」

「ソッとしてあげてください」

「…後日デロッデロに甘やかしてやりますわ…」

「…思考まで悪役モドキなお嬢様なんですね…」

「あら、いやかしら?」

「私はお嬢様でも姫様でも同じ岩崎友紀様なので」

「ではこの姿でも巽さん、と」

「それはご勘弁ください!」

「えー?」


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