157話 粉砕~緊急出動!お嬢様
「巽!急いで戻りますわよ!選曲後の手配含めやること満載ですわ!」
「ハイッ!姫さ『特務へ緊急要請!現在ダンジョンより憑依者6名を緊急搬送する!症状は狐憑き!繰り返す!狐憑き6人!拘束を破ろうともがいており到着まで保たない可能性あり!』…コレは帰れませんわね」
小さくため息を吐き、化粧箱を取り出す。
「確か小道具として…ありましたわ」
化粧箱から私が選んだ道具。それは短鞭ですわ。
乗馬スタイルというならこれです!
短棍を使った武器術等は学習はしておりますし、十分ですわ!
「適度なしなり、グリップもフィットしていますわね…」
「うわぁ…その笑みはサディスティック…叩かれたい…」
「到着を入口で待ちましょう。鞭の冴え、存分に見せて差し上げますわ」
『Yes Ma’am!』
───何故課長さんも敬礼なさるのでしょうか?
緊急搬入口前に立ち、私達は相手の到着を待つ。
「宣言通り、試しますわよ。巽」
「はっ!」
「私の相手をしなさい」
「お断り致しますっ!」
力一杯拒否されましたわ!?
「姫様…お嬢様に万が一が!」
「ふぅん?今の私に触れると?」
「っ、え?」
「今の、見えまして?」
巽の頬を短鞭で撫でる。
そしてすぐに元の位置まで下がる。
「───失礼致しました。では、参ります!」
巽が無手構えから滑り入るように接近してくる。
「え」
「チェック、ですわね?」
巽の後ろに回り込んでいた私は首に短鞭を当てていた。
「そして、これでチェックメイトですわ」
「はっ───え」
「嘘だろ…どうやったらあんな短い鞭で投げ倒すことが出来るんだよ…」
「巽。忘れましたの?私は崩しと投げが得意という事を」
「いえ…ですが、理外の技に何がどうなったのかと…」
倒れたまま呆然とした様子の巽を起こして
「香椎のお爺さまからも同じ事を言われましたわ。皆さま同じ術理を使っているのに何故でしょう…」
「そこまでだ。来たぞ」
課長さんの言葉に全員が車両入口を見ましたが、
「重騎士車が突っ込むぞ!アーマーとシールドで構えろ!」
「「はっ!」」
「祈祷師!まずは周辺を結界で囲め!二人一組で二重結界だ!」
「「「「はいっ!」」」」
「お嬢、巽、いけるな?」
「はい」
「勿論ですわ」
車が此方目掛けて突進してきましたが、シールドに接触する手前で不自然なまでにピタリと止まりました。
「…む?」
車の運転席側の扉が開き、職員と思しき男性が何度も車の方を見ながら此方へと向かってきました。
「どうした?」
「…いえ、私の首を絞めてまで暴れていたのに、此方を見るなり急に大人しくなりまして…」
「…西脇」
「お兄さん、ちょっと此方へ…検査と治療をするわ」
「……えっ?あ、あ。頼む」
私達は警戒を解かずに車を見ていましたが、やがて扉が開き、六名の男女が降りて来るなり、
『申し訳ありませんでした!』
一斉に土下座をはじめたのですわ!?
「貴女様とは敵対せぬようにと回状が回ってきております故…何卒、何卒!!」
……あー!そういえば前に襲撃を受けていましたわね!
「伊邪那美お母様に八雷神を落とされたのでしたよね…私を巫女如きと侮り、狐の刺客を送り」
狐憑き達はビクビクと震えながら額を地にこすりつけておりますね。他者の体だというのに。
「他者の体に入っての謝罪とは…手出し出来ぬとでも思ったか?『異相隔離』」
『ぎっ!?』
「如此持ち出で往なば、荒潮の潮の八百道の八潮道の潮の八百会に坐す速開都比咩と云ふ神、持ち可可呑みてむ」
『それ、それだけは!』
隔離された異相が振動し、六匹の狐が六人の体から剥がれ落ち、どこかへ呑まれて消えた。
「隙あらば逃げようという魂胆。お見通しですわ…しかし、本当に落ちているのですね…」
思わずしみじみというと、
「これで!?今のは神降ろしだろうが!」
「いえ?残念ながら今のは神降ろしではないのです…いつもであれば可能でしたが」
「お嬢…いい加減。一般常識とある程度の限度を学ぼうな?」
課長さん?それはどういうことですの!?
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