443話 2翻(ツモ)と罰

 色々細かなトラブルはあったものの、とりあえず各酒造メーカーさんは作ってみるとのこと。

 まずはお米を確認し、小さなタンクで作ってみる。

 そしてそれをこちらに試作品として送り、OKが出たら本格的に作る…という方向になった。

 それくらい慎重にしないといけないらしい。

 とりあえず川の水が入った瓶を渡し、お米は蔵元さんが乗ってきたトラックに米俵でドドンと放り込む。


【神米】酒造好適米だったが病気に弱く世から消えた酒米。微かに聖気を発する。

 神域で確り育てられたため、欠点のない酒造りに最良の米となっている。ただし、神域のみでしか育たない。普通に食べても美味い。


 まあ、最高の日本酒が出来る事を期待しよう。

 トラックが走り出す。

 各トラックに2俵ほど普通のお米をメッセージ付きでそっと忍ばせておいたけど…間違って精米されたら笑う。まあ、その時はその時という事で。

「さて、私の方の商談を行いたいのですが」

 佐々さんがそう言ってきたので食堂へと踵を返す。

 そう。食堂などの種類納品について話をしなければ!


 絶句されました。

「娘から聞いていましたが、あれはここを抜いての消費量でしたか…」

「はい。こちらは別で入れていたらしいですが、流石にきちんとした所から入れたいなと」

「…承りました。現在どれほどのお客様が?」

「大年神様?」

 奥にいるであろう大年神様を呼ぶと姿を現す。

「神々は常時5~6名はいるな。総人数で言えば37名。最近は24時間開いている」

「それは流石に…」

「あればあるだけ飲もうとするから大変なんだ…神々は半日10杯と制限を掛けているので」

 深いため息を吐く大年神様。

「あ、酒屋で色々買った奴が入っているから使って。炭酸ガスボンベも入ってるよ」

「おおっ!ありがたい!……業務用ウイスキー、ホッピー、焼酎も!これだけあれば暫くは…」

 歓喜する大年神様。ただ、背中は苦労人のそれだった。

「……成る程。通常の飲食店などはストックをそこまで持たないようにしているのですが、こちらはそれを度外視でも?」

「もちろん。一括で運んでもらえるのであればありがたい」

「オーダーシートがありますのでそちらに記入していただければ───」

 途中から大年神様と佐々さんのやりとりとなったので僕はゆる姉様方の方を見る。

 邪魔は入りませんでしたか?

「現在進行形で邪魔が入っているぞ?」

「えっ?」

「アディエーナと私が邪魔しているから大丈夫!」

 ニパァと笑うゆる姉様。

 その笑顔が頼もしい!

「日欧の神々が押し寄せているんだけどね」

 うっわ。

 状況的には増援が来ているようだけど、まとめて空間隔離しているらしい。

「ではそのように」

 あ、話し合いが終わったみたいだ。

「これで色々楽になる…」

 もの凄く深いため息を吐く大年神様

 大年神様色々任せたままでゴメンね!

「では、仕入れ準備がありますので失礼致します」

 佐々さんが一礼して食堂を去る。

 僕は見送るためエントランスに出て───

「ゆーーーーーーちゃーーーーーーーんっっ!」

「ちょっ!?お主!?」

 ナニカガハシッテキタ。タダ、アレハ処罰対象ダ。

 抱きついてきたので軽く半身反転しながら少し身をかがめ、足を手で払い上げ、

「え゛っ!?」

 空中で縦回転する狼藉者を

「いやそれ死ぬだろうが!」

 何者かが止めに───

 グワッシッッ!

「見ィツケマシタ…ヨ?」

「ひぃっ!?」

 お母様が止めにかかった何者かの頭を鷲掴む。

 そして同時に…

「「罰!!」」

 地面へと叩きつけた。


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