742話 Addiction


「第Iアイ種警戒態勢の準備を!」

「「了解ッ!」」

「マジッスか!?巫女様復活ライブ!?俺今すぐ拡散します!こう見えても乙種探索者なんで結構知り合い居るんスよ!」

 なーんか、カウンターもそうだけど、皆大騒ぎだなぁ…めっちゃデジャヴ。


 午前中は休んでいる間の僕宛メールとモンスターやスキルの解析ばかりしていた。

 僕の本職忘れられてませんかねぇ?

 そう呟いたら課長が「配信で皆癒やされているからなぁ」と言うお言葉。

 ───アレもお仕事かぁ!と思いながらお昼は食堂で戴く。

 生姜焼き定食。大変美味しゅうございました。


「よい子と良い大人のみんなー、配信始まるよー」


『何という棒読み』

『ちょい悪人間だったけど良い子になる!』

『配信見るために良い子になる宣言キター!』

『巫女様無理しないで!』

『巫女様復活オメ』


「皆さんありがとうございます。まあ、あのままだと人では無くなってしまっていたらしいので復活にホッとしてます」


『え』

『思っていた以上に危険な状態だった!?』

『過労とかを越えてた!』

『癒しをもたらす巫女様が一番癒やされなければならない事態…』

『巫女様に精神的疲労を与える連中に罰を!』


 ああ、やっぱり騒がしくなってきた。

「ジャンヌさん再生は大丈夫ですか?」

「セット完了ですよー」

「はい。と言うわけでとっとと動画を流しますが、今回は急遽作ったのでそこそこの出来ですが…ジャンヌさんはどうでしたか?」

 僕の問いにジャンヌさんが隣に座って答える。

「可愛すぎて妖艶で…性癖がねじ切れます!」

「うーんこの美少女無茶苦茶だぁ…」

「ミカエル様にもメッセージ送りましたら絶対見るとのことでした!」

「この子、大天使を堕天させようとしてない!?」


『笑顔で怖いことを』

『それよりも直接メッセージを送れる、だと?』

『教会関係者恐怖!』

『あの、ジャンヌ様、ずっと巫女様ロックオンしてません?』

『見間違いじゃ、なかった!?』


「はい、じゃあ再生するよー」

「みなさーん、今回は放心状態含めそこまでのダメージはありませんが、狂化やバフてんこ盛り状態になるのでお楽しみに!」

「なんか不穏な台詞が!?」

 ジャンヌさんが再生ボタンを押した。



『尊い、尊い…』

『巫女様って男の娘で、女性でさいつよかわいいんじゃね?』

『ふおおおおおおおお!ちょっと前線行ってくる!』

『みwなwぎwっwてwきwた!!!』

『巫女様の気持ちと想いを受け止めて、敵を殲滅してきます!』

『巫女様に栄光あれ』


 なんか無茶苦茶な状態になってませんか!?

「あれぇ?可愛い綺麗な巫女様エール、効き過ぎ?」

 ジャンヌさんもちょっと困惑気味だ。

「もしかして、皆さん癒しが足りなすぎて欠乏症状態でしたか?」

 …えっ?

「なるほど、飢えた状態だったらそりゃあ過剰供給になりますね」

 いや、あの…何事?

「餓えた人にごちそうを与えたらどうなりますか?」

「暴走して食べて、体調を崩す」

「現在そんな感じです。皆さん余程飢えていたんでしょうねぇ」

 ちょ、大事だよね!?それ大事だよね!?

「まあ、これで直接的には死にはしないと思いますよ。依存症の人々に待ち望んでいたブツが与えられたので最高にハイになっているだけです」

 僕間接殺人者にもなりたくありませんよ!?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る